ニート

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  • サイズ B6判/ページ数 169p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784048736435
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

ナイーブで無駄のない極上の文章と鋭い感性でとらえた現代人の孤独、寂寥、そして自尊心・・・。気鋭の女流作家、渾身の傑作短編集。

久しぶりに覗いたキミのブログには、極度の窮乏を示すキミの生活ぶりが記されていた。食事は週に三食。一食は具のないインスタントラーメンで、あとの二食は調味料だけで作るチャーハンだった。食事のない日は水道水だけ。シケモクさえもなくなり、全財産は3,000円を切っていた。勤務先をやめ、引きこもり生活を続けるキミが何よりおそれたのは電気が止められること。ネットを切られることだけは避けなければならなかった。キミが死んでしまうと思ったのは少し大げさかもしれないが、どうしてこんなになるまで私に黙っていたのかと思っていたら、不意に泣けてきた……。駆け出しの作家としてようやく本が出せるようになった女性作家とニートの青年との、友情とも恋愛とも言いがたい微妙な関係を描く表題作の「ニート」。
 他人を傷つけることを避けようとするばかりに優柔不断に陥り、かえって人を傷つけてしまうホテルマンの主人公と、育ての親である叔母、遠距離恋愛中の女医との距離とその揺らぎを描いた「へたれ」ほか、いずれも珠玉の五篇。
収録作=「ニート」「ベル・エポック」「2+1」「へたれ」「愛なんかいらねー」

内容説明

どうでもいいって言ったら、この世の中本当に何もかもどうでもいいわけで、それがキミの思想そのものでもあった―。洗練と節度を極めた文章からあふれ出す、切なくも甘やかな感情。川端康成文学賞受賞、気鋭の作家が切り取った現代の生のかたち、珠玉の五篇。

著者等紹介

絲山秋子[イトヤマアキコ]
1966年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、メーカーに勤務。営業職として福岡、名古屋、高崎、大宮に赴任。退社後の2003年、「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞。同年発表の短篇「袋小路の男」で04年に川端康成文学賞を、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞をそれぞれ受賞。この間、芥川賞候補に三度、『逃亡くそたわけ』では直木賞候補にもなる。新作が待ち望まれる今もっとも注目を集める気鋭の作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

なゆ

51
ダメ男だらけの短編集。先に『不愉快な…』を読んでしまったので、乾ってどんなヤツだったんだ?と思って「愛なんていらねー」を読まねばと思って。なるほど強烈。他の短編の印象が薄れるほどに。乾の変態っぷりがすげー。先にこっち読んでたら、絲山さんにショック受けたかもしれないけど、乾がそういう風にしか生きられない哀れなヤツだと知ってるから、そんなに不愉快にならずに済んだかな。「へたれ」の、新幹線のホームから車中もずっと自分に言い訳してるような思考のなかで、それをぶった切るような案内アナウンス、その臨場感がよかった。2014/10/24

おくちゃん🌸柳緑花紅

50
めしいらずさんのレビューから☆読んじゃった~!最後に「愛なんかいらねー」に強烈なパンチをくらいました。苦痛の見た目と快楽が似ているって!!!!他の4つは、胸の奥の方を刺激してチョッピリ泣きたい気分にさせる。出直します。^^;2014/01/18

めしいらず

49
さすが絲山印の短編集。どれも面白いが、何と言っても「愛なんかいらねー」の衝撃たるや。男の変態的な性行為を嫌悪する理性と、その背徳を畏れつつもモラルから解放されることへ憧れる感情とのせめぎ合い。その心情が主人公の「世の中、消えちまえ」の叫びに凝縮し、迸る。それでも、そんな自分を客観的に俯瞰した沈着な語り。ボクらを搦め捕るモラルという枷を、未知の領域への暗い憧憬を、チクリチクリと刺激して止まぬ。「2+1」と「へたれ」も素晴らしい。目立った出来事でなく、どう物語るかに心を配ることで、読み手をグイグイと引き込む。2013/11/28

bura

46
絲山秋子、5作からなる初期の短編集。多分どこにでもいるであろう人々が、主人公となる物語。だがその生と性を作者独特の異質な感性の中で描いていく。各作品に共通する軽やかな会話の流れが重いテーマを心地良い読後感へと変えていく。そこが絲山作品に魅了されるポイントだ。特に表題作の「ニート」と続編の「2+1」が切ない。ニートの「キミ」と作家の「私」は何処へ漂って行ったのだろう。淡々と、然しその余韻がたまらなく愛おしい。2021/11/25

いたろう

41
表題作を始め、全五編の短編集。絲山作品には普通の男女がなかなか登場しないとは思っていたが、この短編集に登場する男たちのダメ振りときたら。「ニート」と、続く「2+1」のニート男は、どんなに困窮生活を送っていても、働く気がないという時点で同情の余地なしだし、「愛なんかいらねー」のスカトロジーときては何をか言わんや。そしてその男達を受け入れてしまう女の存在。絲山秋子は、極端な人間を描くことで、人間性を浮き彫りにする。そこでは全く読者の共感を求めず、むしろ読者を突き放す。ここで途方に暮れる読者も多いかもしれない。2014/08/16

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