内容説明
恋愛、仕事、結婚、出産、家族、死…。大手企業に勤務するキャリア女性の29歳から40歳までの“揺れる10年”を描き、「運命」の不可思議とその根源的意味を鮮やかに描いた書き下ろし900枚、待望の刊行。
著者等紹介
白石一文[シライシカズフミ]
1958年、福岡市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。大手出版社に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行し、作家デビュー
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クリママ
46
大手企業に勤めるキャリア女性29歳からの10年間。恋愛と結婚。同じ年頃に読んでいたら共感できただろうか。生身の人間の生活や性愛、嫌悪や嫉妬などマイナスの感情がない。登場人物はみな美しい人、経済的にも恵れ、賢く伸びやかに育つ。それがこの作者の持ち味でも良さでもあるのだろうが、生と死のシビアな内容でもあるのに、ただ運命という言葉に結びつけ、何か机上の空論のようにさえ感じる。しかしながらラストでは、そう、こんなことがあると思い、感慨深い読後となった。 2016/08/07
wildchild@月と猫
39
主人公の亜紀は、第一期総合職世代のキャリア女性。仕事が出来て、真面目で頑張り屋だが、どこか頭でっかちで動物的な嗅覚を失っている。せっかく恋人からプロポーズを受けても、ただ結婚という行為にピンと来ない、という理由だけであっさり断ってしまう。その後様々な経験や試練を経て、彼女は10年後にかつて別れた恋人と再会する。それは必然という名の運命なのか?人は時にどうしようもなく避けられない出来事に直面する。それをいかに受け止めるか、何を選択するか。その積み重ねこそが、唯一でかけがえのない人生を形作るのだろう。2015/07/31
もぺっと
35
白石さん初。様々な運命に翻弄される、そしてその運命を受け入れていく人々の姿が描かれている。病気、事故、死などの出来事が多く、重苦しかった。ある人物が自分の人生はすべて自分の選んだことによって決定していると語っているが、そうとばかり言えない運命を背負った人も登場する。生きていくということは、選んだにしろ選ばなかったにしろ、その運命を受け入れていくということなのだろう。最後の場面は切なく、涙が込み上げてきた。2016/02/16
MINA
34
運命論とかあまり好きでもないし、主人公の人生を追っていくだけの話って冗長になりがちで苦手だったりする。けど、純平と別れたあたりからかなりのめりこんでいった。純平には本当に苛々させられたわ。康とまた結ばれて良かった。康の母・佐智子からの「ほんとね。丸十年の遅刻よ。-よく来たわ。ずっとずっと待っていたのよ。」でもう泣きそうになった。生まれ変わって白馬に、とかよく分からん…と思ってたのにラストで白馬が亜紀の目の前で脚を止めた時にゃ少しばかり感動してしまった。愛する人より先に死ぬ方が、残されるよりもつらいのかな。2016/05/10
銀河
32
読み終えた〜。前半は堅苦しい文体に慣れなかったのと、主人公があまり好きになれなくてイマイチだったが、義妹沙織の話から夢中になり、最後まで目が離せなくなった。運命とかビビビッときて結婚とか、正直理解できないので、一話目の雪の手紙には引いていた。黄葉の手紙の若いカップルの持論にも…。しかし、そこからの怒涛の展開。日常の何気ない会話や描写が後から重大な意味を持って思い出されるところに感動し、胸がしめつけられた。最後の場面は、あれは、もう泣くしかない。来てくれてありがとう。2012/10/28