内容説明
ライターの隆司は離婚して、増幅器と共に独り部屋に残された。画家、建築家、編集者…男女9人の愛にともなう心の痛み。この痛みの連鎖を断ち切ることはできるのか?遍在する暴力の蠢きを見事に浮かび上がらせた、同時代的作家の誕生。
著者等紹介
駒沢敏器[コマザワトシキ]
1961年東京生まれ。雑誌「SWITCH」で編集者、取材記者を務めた後、現在フリー
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
15
写真集か雑誌のような小説。著者は元SWITCHの編集者とあり、合点がいきました。複数のエピソードが交錯しつつ、進むストーリー。このこじゃれた感じは、片岡義男っぽいですね。2014/08/16
おおにし
12
本の帯に「象はなぜ最愛の主人を襲うのか?」とあるが本当なのだろうか。この小説に登場する人たちのように自分の憎悪や暴力を自分のすべてを受け入れてくれる最愛の人にぶつけてしまうということは確かにあるかもしれない。駒沢さんの著作を何冊か読んでいるとわかるが、主人公の隆司は駒沢さんの分身ではないかと思う。突然家を出て行った彼の妻や、彼女が持っていた石の話などがこの物語と重なってくる。駒沢さんのファンとしては興味深い。作者が故人のため続編が望めないのが残念だ。2016/05/27
daubentonia
6
不思議な印象の作品でした。人は生きていく中で知らない内に“暴力”に曝され、別の人に“暴力”を与える。しかしながら、どこかで“暴力の連鎖”を止めなければいけない。人を愛するという事は、“暴力の連鎖”と闘う事に他ならないと感じました。突き詰められた孤独は、自分が存在している世界の境界線も曖昧にしてしまう…。う〜ん、難しい。『存在していなくても、心のなかでは生きているんです』2012/12/25
かみーゆ
4
純文でした。駒沢さんの村上春樹っぽさは以前から感じる部分がありましたけど、最後の中古車が並んでるところなんて完全にピンボールですよね。そういえば「彼女の腹筋」でも洗車場が印象的だったな。初期の村上春樹は読者とのコミットメントの手段として小説を描いてたんでしょうけど、駒沢さんはこの作品で自分と他者という関係性の不確実性みたいなものを描きたかったのかな。などと文学部の学生みたいな感想を書いてみましたけど、読めてよかったというのが一番です。これで駒沢さんの著作は全部読んじゃったのか。寂しいなあ。。2022/01/06
tomo
4
愛しているから傷つけてしまう、わかる気がする。私も自分のことだけで精一杯な時期に、家族にきつく当たってしまった。 それから友人や恋人を作ることに抵抗があって、人と親密になるのが怖い。いずれ家族になろうと言い出されたら怖いから。暴力という言葉でストレートに表されると耳が痛い。 昔、心に作ってしまった石が、その後の人生の決断を左右するというのなら、どうやって生きていけばいいのだろう。フィクションだけど、こんなにも石を持つ人が町にいるとしたら、これもひとつの勇気の物語だとに思えた。向き合う努力をしていきたい。2021/01/08
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