内容説明
結婚、家族、愛、信仰、そして死―。明治初め、東北の寒村に生まれた多喜二の母、セキの波乱に富んだ一生を描く、書下し長編小説。構想10年。三浦文学の集大成。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆきち
64
ポッドキャスト『OVER THE SUN』のパーソナリティー堀井美香さんが、自身の朗読会で本書を一言一句間違わないように覚え朗読していると聞き、美香さんが心を動かされた本を読みたいと手に取りました。三浦さんの素晴らしい筆力に引き込まれ、あっという間に読み終えました。小林多喜二の母、セキがどのように生まれ、多喜二たちをどのような想いで大切に慈しみ育ててきたかをセキ本人から直接聞いたような気持ちになりました。大切な息子を無惨に殺された母の想いがとても辛かった。多喜二のことも知ることができ、読んで良かったです。2024/03/15
ちゃとら
26
セールで500円以上110円オフの時の後一冊、三浦綾子さんなら、ハズレはないだろうと中も確認せずに購入。 何と、私の積み本の中の「蟹工船」作者の母だった。そして小林多喜二は昭和8年2月20日に、警察に拷問死させられていた?勉強不足全く知らなかった。 三浦さんの本にしては、キリスト色は薄めでドキュメントタッチ。 母セキは生家も貧しく13歳で、継母のいる貧しい旦那の元へ嫁ぎ6人の子を持つ。 おしんのような苦労 話を想像していたが、裏切られた?みんな優しく明るいかった。挫折した蟹工船もう一度トライします。 2018/02/09
アッキ@道央民
13
図書館で手に取って気に入ったので借りて来ました。三浦綾子さんの本はこれが初めて。小林多喜二の母の語りを元に書いた作品。貧しい暮らしの中にも明るさがある。何度も不幸な出来事があり、そして息子多喜二の悲惨な死。 その母の家族や多喜二に対する愛、そして強さを感じました。 いずれまた自分でも買って再読したくなる一冊でした。2013/01/19
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
9
常々ノンフィクションをその題材についてのみ語ってはいけないと思っておりますが、つまり、小林多喜二の母の凄さについて語るのではなく、小林多喜二の母という人の凄さを知らしめてくれた三浦綾子の筆力こそが凄いと。畳み掛けるように一人称で語るというのは他にもあったように記憶してますが、人の想いを訴えるやり方として筆者には合っているのかな。小林多喜二はその作品以外のことは全く知りませんでしたが、共産主義ってものは本来、貧しい人のためのものだったのだなあ。キリスト教も。私は本田神父の言葉に惹かれて教会に通い出したけど→2019/05/28
ちょん
4
「蟹工船」の小林多喜二の母の語り口調で話が進む。とても読みやすい。壮絶な小林家の貧困、そんな中でも明るく和やかに生きていた小林家に数々の不幸が襲う。そんな貧しい家庭でそだった多喜二の人に対する優しさ、家族への想い、そして母の強さに胸を打たれた。多喜二はまわりの人に愛と優しさをいっぱい渡して、生涯を終えてしまった。時代に殺されたような息子を持った母のつらさが心に痛い。2012/04/14
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