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内容説明
太平洋の真ん中、赤道直下に浮かぶ、名前のない小さな島。そこには教会があり、神父とわずかな島民が暮らし、訪れるどんな二人も祝福され、結婚式を挙げることができる。同性愛、近親愛、不倫愛、そこではあらゆる愛がゆるされる―その二人が、ほんとうに愛し合っているかぎり。その島を訪れる、父親と娘。それから姉と弟。ある者は愛の存在証明のために。またある者は不在証明のために。様々なものを見失って渇いた者たちの、いのちと時間がその場所で交錯する―。
著者等紹介
杉井光[スギイヒカル]
1978年、東京都に生まれる。高校卒業後、雀荘勤務の傍ら音楽活動を続けていたが、バンド解散をきっかけに小説執筆を始め、2005年、『火目の巫女』で電撃小説大賞“銀賞”を受賞。以降、幅広いジャンルの作品を発表し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とら
77
「存在証明の失敗は不在証明にならない」自分は同性愛とか近親愛とかそういうのは分からない。でもそれは自分たちの勝手な定義であって、そういう人たちは自分の定義をちゃんと持っている。だから差別とかはしてはいけないと思う。けれどやはりどうかと思ってしまうのが人間のサガ。愛すべき対象が少しずれているだけなのに批判を浴びる。最初にそういう定義を作った人は誰なんだろう。そんなことを言ったらキリがないのでやめておくけれど、そういう人たちにとってこの島は楽園だろう。実際にあるんだこの島。杉井さんどこで見つけたんだろ。2012/02/05
おかだ
53
うわ、どうしようよく分からなかった…。言いたいことややりたい事はなんとなく分かるんだけど、理解しきれてないし釈然としない。不倫愛、近親愛、同性愛など…二人が本当に愛し合っていれば、すべての愛がゆるされる島が舞台の物語。こういった禁忌系の恋愛に苦手意識があったせいか、どうしても登場人物たちの心情を上手く捉えることができない。謎めいた島の秘密が明かされる展開や構成はとても魅力的。だけど私、あの○○○系トリックも苦手だから…苦手分野のコンボで久々にリタイヤ寸前まで追い込まれた。2018/09/12
くろり - しろくろりちよ
42
『すべての愛がゆるされる島』それは普通には認められない同性愛、近親愛、不倫、「愛があれば許される」教会のある島。その島に向かって旅立つ父娘と、姉弟。自分たちの愛の存在証明のために。あるいは、不在証明のために。時系列を使った叙述トリックだってことに最後まで気付かなかったなぁ…しかも、二回。静かな物語。愛を全ての理由にする物語。楽園か、地図にもこの世にない世界か。2012/04/17
ピロ麻呂
33
不倫、同性愛、近親愛など全ての禁断の愛が許される島…基本設定はいいのになぁ。全然おもしろくない(>_<) 連作短編だと思ったのに、近親愛のよくわからないストーリー(^_^;)残念。2017/01/03
キキハル
33
すべての愛がゆるされる島があるという。常夏で高台に教会があるらしい。そこには禁忌の愛を抱える人たちが訪れる。実の父娘、姉弟、同性同士。愛をゆるされた人には扉が開き、すべてがある楽園へと誘われるそうだ。そんなお伽噺に芯を与え、リアルな物語に仕立て上げる構成力の力技の勝利だと思える。愛の、存在と不在の証明。倫理や道義にもとる愛のありよう。それを判断するのは神だけなのか。地図にものっていない島に望みを託す恋人たちの切実な心情が胸を打つ。特に素数のエピソードが印象深く、あとがきもユニークだった。2012/05/26