新・世界の神話
永遠を背負う男

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  • サイズ B6判/ページ数 151p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784047915138
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

ギリシア神話に登場する、ティタン神族の巨神アトラス。高潔で不屈な彼の精神に、かつて大陸アトランティスの住人たちは忠誠を誓った。しかし神ゼウス対ティタンの激しいオリュンポスでの戦いに敗れると、過酷な罰が与えられた―未来永劫、そのもてあます巨躯で天空を背負え、と。そして世界の西の果てで、孤独に重荷を支えることになる。唯一の慰めは、彼の目に映る「ヘスペリデスの園」。女神ヘラの宝である黄金のリンゴの木と、守りをする娘たちの姿だ。そんなアトラスのもとを訪れたのはヘラクレス。ゼウスが人間の女に生ませ、幼くして女神ヘラの乳を飲み不死身となり、恐れを知らぬ英雄として数々の怪物を退治してきた。ヘラのリンゴを奪う使命を受けた彼は、アトラスに仕事の交換を持ちかける。そしてヘラクレスが天を代わりに背負い、アトラスは黄金のリンゴを取りにゆく…。いっときの自由を味わったアトラスが、自らの重荷に疑問を抱き、背負わされた運命を自らの手で変えようとしたら。世界は、どうなるのだろうか。文学の自由を謳歌してきた表現者ウィンターソンが、自らの半生を重ねてアトラス神話を、そして宇宙の始まりを創造する、渾身の一作。

著者等紹介

ウィンターソン,ジャネット[ウィンターソン,ジャネット][Winterson,Jeanette]
1959‐。マンチェスター生まれ。ランカシャーで育つ。熱狂的なキリスト教信者の母親のもと、絵本の代わりに聖書を読み、童謡の代わりに賛美歌を歌い、家には布教地図が張られ、学校では周りの子どもから完全に浮いていた。レズビアンである自分に気づき16歳で家出。トラック運転手や葬儀屋のメイク係など職を転々とした後、オックスフォード大学で英文学を学ぶ。卒業後就職の面接で自らの半生を語り、それが出版社の目に留まって作家デビュー。処女小説『オレンジだけが果物じゃない』(Oranges Are Not the Only Fruit/国書刊行会)でホイットブレッド賞を受賞。以後7作の小説を刊行。また自らの作品をテレビ、映画、舞台にあわせ脚色もしている。現在オックスフォードシャーとロンドンに在住

小川高義[オガワタカヨシ]
東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。横浜市立大学国際総合科学部準教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネロリ

9
アトラス神話をウィンターソンが描くのだから、やっぱりこうなるのかというくらい、ウィンターソンの小説だった。彼女の物語を読むのが初めてという人は戸惑うだろうな。「人間の選択について、何が言えるだろう。運命は決断の対極にあるらしい。そして人生は、だいたい運命であるようだ。」そこからまた始まるから、彼女の物語が好きだ。2012/04/10

tona

4
世界中の神話をもう一度語り直す"The Myths"の一作。ここでは、アトラスとヘラクレスの物語が、作者自身の人生を織り込みながらカバーされいる。「自由は存在しない国だ。」他者から背負わされていたはずの重荷をいつしか自らの意思で背負い込んでしまう。その上、その重荷は途方もなく重いだけで、実体など何もない、なんの意味もないものなのだ。この作品では、何よりも自分自身のために語る作者の態度が強く感じられる。前作『灯台守』においても強く意識されいた「物語る」行為が、違った側面で提示された作品と言えよう。2013/12/11

syachi

2
作中に繰り返し出てくる無と語り直したいという望み、そしてアトラスの神話を著者の自伝的な部分をかませて再構築したということがイマイチしっくりこず。他の作品と後書きを読まないといけないかなー。そしてペルセウスとの関係性は一体どうなったのやら。と思っていたけど調べてみるとあくまでバリエーションの一つなのね。2014/04/06

cymbal

2
ジャネット・ウィンターソンの小説は、まず第一に自分のために語っているような感じがする。そういう意味では人を選ぶのかもしれないけれど、なかなか好き。2012/05/14

ぼむ☆

1
同著者の『灯台守の話』が非常に良かったのでこれも読んでみた。地球を永遠に背負い続ける罰を負ったギリシャ神話のアトラスが主人公。一時的に地球を背負うことをヘラクレスに替わってもらったことにより、アトラスの心境に変化が生じる。時は過ぎスプートニク号に乗ったライカ犬がやってくる。ライカもまた負担を背負わされた者。重荷を背負い続けるべきか、下ろすべきか。ジャネット・ウィンターソンの作品には独特の世界がある。自己実現という重荷を背負って苦しむ現代人には良書だと思う。2019/06/03

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