出版社内容情報
魅力的な容姿、愛に満ちた両親、安定した仕事、魅力的なボーイフレンド達……。ベロニカは満ち足りているはずだった。でも何かが欠けていた。そして、ある冬の朝、睡眠薬を手に、彼女は死ぬ決意をした――。
内容説明
ベロニカはすべてを手にしていた。若さと美しさ、素敵なボーイフレンドたち、堅実な仕事、愛情溢れる家族。でも、彼女は幸せではなかった。何かが欠けていた。1997年11月11日の朝、ベロニカは死ぬことに決め、睡眠薬を大量に飲んだ。だが、しばらくすると目が覚めてしまった。そこは精神病院の中で、彼女はまだ生きていた。そして医者は彼女に、心臓が弱っているので、あと数日の命だろう、と告げた―。
著者等紹介
コエーリョ,パウロ[Coelho,Paulo]
1947年ブラジル、リオデジャネイロ生まれ。世界中を旅した後に音楽とジャーナリズムの世界へ入る。1987年、初の著書『星の巡礼』(角川ソフィア文庫)を出版して注目を集め、88年に発表した『アルケミスト』(角川ソフィア文庫)が世界中で大ベストセラーになる。現在は世界を旅しながら精力的に執筆活動をつづけている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナマアタタカイカタタタキキ
59
自身の内的世界を外の世界に適応させる。その中で生じる誤差が、少しずつ人を狂わせていくのだ。自分の内側からの声に従って生きることは狂気の沙汰なのだろうか。そんなことをしていては生きてはいけないという妄信、それこそが狂気の源泉ではないだろうか。大切なのは過程である。そもそも、最後に辿り着く場所が何処であるかなど、誰一人として知らないのだから。──終わり際になって色々なことが明らかになる、これはままあることかもしれない。そして、それが本当に終わりであるかどうかも、誰にもわからないはずなのだ。到達してみなければ。2021/08/30
うりぼう
52
「アルケミスト」「星の巡礼」が既読の私は、またスピリチュアル系のお話と勝手に想像していた。内容は「カッコーの巣の上で」と同じ設定で、似て非なるもの。今日、大阪ボラ協の早瀬氏が「依存力」の重要性を説き、「『孤独』とは、愛することをおびえる状態」と定義された。自己を愛することにおびえる人は、孤独である。自分を抱きしめてあげない人は、他人を抱きしめることはできない。イゴール博士は、社会と繋がるために警備の報告書を後回しにする。2010/01/18
たまきら
46
なんだか唐茄子屋政談みたい…と思いつつ。金馬のバージョンかな?おじさんが「若いやつはちょくちょく死にたがるもんだ」っていうんです。ベロニカは恵まれているようですごい井の中の蛙というか、恵まれていることに退屈しきっているというか…。「太陽がまぶしいから人を殺した」を思い出す、平凡な人間の中の狂気を掘り下げた本です。2023/02/08
テツ
41
ただ繰り返される日常に耐えきれず薬物の大量摂取により自殺を試みて精神病院に叩き込まれたベロニカ。病院内での様々な人々が歩んだ様々な「狂った」人生が群像劇的に描かれる。本当は生きることはもっと楽な筈だということ。周りの人間の目や、周りの人間の行動に萎縮して、他人と比べて自分を形の合わない鋳型に無理やり入れることから、息苦しさが始まり狂気が始まる。自分をきちんと確立させること。愛し愛される中でも縛られず息苦しさを感じず、ただ自分で在り続けること。自分の生を無意味に感じ、無味乾燥なものにしているのは自分自身だ。2019/03/24
コージー
35
★★★★☆不幸ではないのになんだか心が満たされない、そんな日々はないだろうか。なに不自由なく暮らしていた若くて美しいベロニカは、ある時自殺を試みる。理由は、老いて下り坂になる今後の人生に悲嘆したこと、不条理な世の中に対してなにもできない無力感に襲われたこと。しかし彼女の自殺は失敗し、精神病院へ幽閉されてしまう。この物語は、「狂気」の世界と「普通」の世界の垣根を揺さぶり読者に疑問を投げかけてくる。そして、生への希望をも与えてくれる。『アルケミスト』とはちょっと味覚の異なる、心の探求書ではないだろうか。2022/02/01
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