時の矢―あるいは罪の性質

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時の矢―あるいは罪の性質

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  • サイズ B6判/ページ数 232p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784047912144
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

私は暗黒の眠りから抜け出る。意識が回復すると、深い孤独感に包まれた。私はなんど自問したことだろう。世界はいったいいつから意味をもちはじめたのか?私は家のほうへ後ろ向きにあるいている。鳥たちが奇妙に鳴く。私はどこへ向かっているのか?私には私たちが嵌め込まれているこの世界がよくわからない。世界はフィルムが逆さまに回っているように見える。あらゆるものに見覚えがあるのに、まったく勝手がわからない。時は避けがたく過去を放射する。街や森を駆け抜ける車のフロントガラスに映る風景のように。英文壇の異端児が放ち、驚愕をもって迎えられた世界初の〈逆語り小説〉。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やまはるか

8
アウシュヴィッツでホロコーストに手を下した医者が逃亡先のアメリカで没した時から彼が生まれた1916年に向かって時を遡る。車を発進させる時はブレーキを踏み、停車する時はアクセルを踏む。時が逆行すると全ての意味がひっくり返る。殲滅された数十万の人々がガス室を出て列車で帰って行く奇跡を想像し胸躍らせて読んだ。中央銀行から来た金を使って歯科は粗雑に処置し、ガス室に折り重なった死体を運んで肋骨の間に長い針を刺して心臓にフェノールを打つと、生き返ってベッドを降り部屋を出て行く。人が死んだ場所は甦る場所。逆もまた然り。2020/08/15

Mark.jr

4
おそらく世界でも数少ない完全な"逆語り小説"。時系列を遡って記述するのではなく、登場人物の動きもそのまま逆再生の如く描かかれる(例えば、車は急発進させる描写は、アクセルをいっぱいに踏み込んで急停止するとなる)、相当凝った文体になっています。勿論読みにくいわけですが、単なる実験だけではなく、主人公の秘められた過去に対するミステリー的表現として、有効に機能しています。2023/01/18

三柴ゆよし

4
逆小説あるいは遡及小説。一人の男の人生が、その死の瞬間から巻き戻し再生されていく。つまり読者は、男の人生を反時計回りにたどることになる。食事は嘔吐によって行われ、暴力によって人は癒される。医者は慎重な手つきで患者を痛めつけ、大人は子供から玩具や飴を奪う。男は悪夢にうなされる。それはかつて、彼の犯した(犯すことになる)「罪」の呵責によるものらしい。では、彼の背負う「罪の性質」とはなにか? なにせ全編逆向きの描写だから、読むのは疲れる。が、非常に面白い。『スローターハウス5』が好きな人は、是非一読あれ。2009/12/29

monado

3
ある男の一生が、死んだときから生まれるときまで、時系列だけでなくシーンそのものが逆回しで描かれるという異色作。 時間が逆回しなわけなので、実際になにがおきているのか、どういう会話なのかを読み取るのに非常に苦労するが、その実験的手法が終盤になって重要な効果をもたらす構造になっている。2017/02/23

勉誠出版営業部

2
同僚から貰った、マーティン・エイミスの『時の矢』を読了。一人の男の死から徐々に年をさかのぼっていく異色小説。映画ではギャスパー・ノエ監督の『アレックス』というのが同じ手法を取っていますが、小説では前代未聞かと。抽象的なくだりは「?」だったけど・・・。2013/06/05

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