内容説明
アメリカの原爆開発の実験基地、ロスアラモスにソ連のスパイが紛れこんでいるという疑いは早くからあった。計画を率いるオッペンハイマー博士すらその疑いを免れることはできなかった。当局はオッペンハイマーの監視役としてジョー・ペーニャ軍曹を選んだ。インディアンの血を引く彼にとって、基地のある一帯は故郷でもあり、オッペンハイマーとは旧知の仲だった。人選は偶然ではなかった。ジョーがそこに見たものは、インディアンの呪術信仰の聖地を侵し、野生を次々と汚染してゆく〈マンハッタン計画〉の実態だった。すべてを冷静に観察するジョーの胸に、やがてある計画が固まりはじめた―。