内容説明
「総合商社鉄鋼開発部」―中高層ビル用の鉄骨販売の取引を主とする部門である。そこは、鉄骨ブローカー、土建屋、デベロッパーと称する地上げ屋、そして“黒い影”まで付きまとう世界でもある。奄美大島で現地視察と興和開発の名瀬出張所を訪問の予定になっていた、太洋交易鉄鋼開発部部長代理の船越司郎が水死体で発見された。右手首には鋭利な刃物で切ったと思われる傷が無数に…。太洋交易を五年前に辞め、小さな調査事務所を経営する菊島五郎はかつての同僚の不審な死に独自の調査を開始した。現代社会を鋭く抉るサラリーマン・ハードボイルドの傑作。