出版社内容情報
これは、日本各地に点在する集落で今も密かに行われている儀式を記録したものである。
第一の記録『瀧来集落』
東北では、少女を囲み、男たちが無言で数珠を回す雨乞いの儀が行われる。儀式の後、少女は必ず失踪し、誰一人として戻ってきた者はいない。
第二の記録『高山集落』
四国では、神仏の声を聴くための禁忌の儀式「オハチヒラキ」が継承されている。霊力を強制的に開花させるこの行為は危険すぎて禁じられているが、集落では今も続けられているという。
【目次】
内容説明
これは、とある集落で今も行われている儀式の記録である。東北の「瀧来集落」では、少女を囲み、男たちが無言で数珠を回す雨乞いの儀が行われる。儀式の後、少女は必ず失踪し、誰一人として戻ってきた者はいない。四国の「高山集落」では、神仏の声を聴くための禁忌の儀式「オハチヒラキ」が継承されている。霊力を強制的に開花させるこの行為は危険すぎて禁じられているが、集落では今も続けられているという。この記録に触れた者は、決して無傷では済まされない―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
73
フィールドワークへ向かった2人の大学生。彼らのメモやスクラップから紐解く集落に伝わる儀式の記録。断片的な情報が繋がり現れるおぞましい真相。読者の想像力を試すような趣向が新しいモキュメンタリーホラー。東北の集落に伝わる儀式。この雨乞いの儀の後で必ず少女が失踪するのはなぜなのか?本来降るべきでないものが空から降る『ファフロツキーズ現象』を絡めて語られるのが面白い。また四国の集落に継承される神仏の声を聴く為の「オハチヒラキ」霊力を強制的に開花させるのに行われている事とは…。考察好きな人におすすめの因習村ホラー。2025/09/07
眠る山猫屋
56
それぞれのフィールドワークへ向かう恋人たち。そこから浮かび上がる失われた儀式の悍ましい真実。挟み込まれる多数の取材記事のスクラップに導かれるようにして真実の姿を現していく秘密。真実は悍ましいものだが、村人たちは皆さん善良だし、主人公たちもあまり危険に晒されたりしない。だから“怖さ”は薄い。肩透かし感は否めない。一歩向こう側へ踏み込めばクトゥルー神話みたいな雰囲気になるのにな。その分、読み易い。二人とも日常へ帰れてよかった( ╹▽╹ )。2025/09/07
ごみごみ
53
古くから伝わる奇妙な儀式を探る「現地報告」と「スクラップ」の断片的な情報が交互に収められ、「最終報告」での考察に繋がっていく、モキュメンタリーホラー。とにかく終始不気味さが漂う。個人的には、結婚したばかりの頃に夫の母が「数珠こ」(ズズッコと発音していたと思う)という集まりに参加していたのを思い出した。女性が何人か円になって座り、手を繋いで数珠を回しながら何かを唱えるという。どこで何のためにやっていたのか?聞いた気もするが記憶が定かではない。この作品に出てくる1つ目の儀式に似ていてゾワッとした。2025/08/10
佐倉
25
実際にある伝承、実際に記録された現象、実際にある風習や儀式……そうした記録のスクラップを並べることで、読者に”堕ちた儀式“の朧気な像を結ばせる。モキュメンタリーブームの中にあって正統派な味付けの作品。本筋の合間に挿入される各テキストの配置の仕方がノベルゲーの凝ったtipsのような雰囲気があって没入感が高い。単に田舎の因習が…みたいな切り口ではなく地盤の弱い瀧来集落でなぜ雨乞いが伝承されるのか、というような視点から違和感に切り込んでいくのでちゃんと人文学的な雰囲気があったのもリアリティが感じられて良かった。2025/09/05
よね
14
日本のどこかに残るとされる儀式を研究したスクラップ帳と、それを調べている過程を小説にしたもの。出てきた2つの儀式がどこかで繋がるのかと思ったけれど、そういうわけではないらしい…。◆びっくりさせるような怖さではなく、後からじわじわ薄気味悪くなってくるような読後感。2025/08/08