出版社内容情報
坂口尚の3大長編、ついに復刊完了!
ありとあらゆる情報を保有し、姿形を自由に変えるバイオチップ「我素」。
それは人類のVERSION UPなのか。
これは軽快なSF活劇マンガであり、
重厚な哲学的思考実験だ。
しがない私立探偵に舞い込んだ依頼は人類滅亡を引き起こしかねない大問題!?
失踪した博士を探しに向かったのは自然の楽園オーストラリア。
学習し自己増殖する細胞と、それを追うレギリオ教団の暗躍が波乱を起こす。
アングレーム国際漫画祭「遺産賞」を受賞し、
世界での名声高まる作家の重要長編作が大判&高精細で復刊!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
22
名作『石の花』と遺作『あっかんベェ一休』との狭間にあって、『VERSION』は分が悪い存在なのかもしれない。ところが、今回の復刊を機会に手に取ってみると、今まで読んでこなかったことを悔やむほどのクオリティに圧倒されてしまう。これは、いわゆるニューウェーブのムーブメントの中で独自のスタイルを確立していった坂口尚が、『石の花』での手応えをステップにしながら満を持して発表したSF大作なのだ。壮大な主題が、しかしコミカルな下層の住人である主人公の視点によって語られる構造がまた、坂口らしい。2025/04/04
へ~ジック
7
海獣の子供、その原型のように見て取れた。「我素」なる人類の科学が産み出し、後に枷を逃れた未知の生命体を追う話。その目的は不明。けれども追跡の過程において地球、人間を振り返らなければいけない。これはなんなのかと。2025/05/04
えーてる
1
およそ35年ぶりの再読になる。やや難解で、韜晦で、哲学で、SFで、ミステリーだった。坂口尚ファンを自認していた自分だったが、当時はなかなか頭に入ってこなくて苦労した。今はむしろすんなりと染み込むように理解できる。「ええ、翻訳とか版という意味よ。コンピューター関係では“改訂”という意味にも使われているわ」。本作における「VERSION」という言葉は、現代での使われ方とは少々異なっている。バージョンそれ自体に「進化」の意味を持たせている。現代用語で言うなら「バージョンアップ」がそれにあたるだろうか。2025/03/20