出版社内容情報
世界各国、いろんな時代を舞台にレコードと音楽の紡ぐオムニバス連載「音盤紀行」。
第3巻は「旅」をコンセプトに作品を編みました。
・近未来月面。月の老音楽家と助手アンドロイドの共同作業。言葉にできない想いを音楽に込めるふたりの交流を描く「ムーネイジボイジャー」
・70年代イギリス。英国北部湖水地帯に休暇にきたアイノ。そこで出会うのは母から受け継いだ曲のルーツを探すアメリカ人の青年だった。恋の始まる予感漂う「ファラウェイフォーク」
・80年代アメリカ合衆国。ニューヨークのとあるホテルの一室で密かに営業する海賊盤屋があるらしい。訪れるは盲目の女。彼女の音楽愛は小さなきっかけから爆発する「キャロラインホテル、510号室」
・80年代東欧。ポップミュージックの禁じられた国で西側の音楽を楽しむラナたち。ドイツからの旅行者との出会いが秘密の音源作成に向かわせる「暗地下のビートバンド」
・現代南アジア。ついに祖父が旅したパジャールにやってきた麻耶奈。現地で音楽を奏でる少女は音楽を金稼ぎの手段だという。亡き祖父の願いを見つけ出す「輪奏紀行」
など珠玉のエピソード満載です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
1959のコールマン
48
☆5。100円以上値上がりして発売。でもまあパワーアップしているので文句なし。して今回のテーマは「音楽と旅」というところ。いや旅の方が中心か。帯にも「レコードは『旅』に似ている」とある。バラエティ豊かにあちらこちら場所と時間を色々飛び越えて描かれている。個人的には海賊盤の話が気に入ったかな。スージーが好み。盲導犬の名前がボーナムなのも良い。いつの時代の事だろう?今だと録音機材がかなり小型になって、加えて機能もかなり充実しているので、オープンリールで録音するというのはかなり前の時代だと思うが・・・。2025/02/26
へくとぱすかる
46
細い線で描かれたレトロな世界。しかしその周回遅れこそ、今や新しいのだ。ブームの中のレコードだが、古い盤の発掘だけの物語ではない。これから新しく作っていくものでもあること。それが納得できる話が多くなった。「紀行」を名乗るだけあって、旅先で見いだす音楽と、その容れ物としてのレコード盤の物語が中心。抑圧された政治状況のさなかであっても音楽の自由、ひいては心の自由を得ようとする群像劇は、これからもどこかで、あるいは身近にありうることとして心に留めておきたい。そんな歴史を焦点化するシンボルとしての物品がレコードだ。2025/02/24
neimu
33
積ん読、やっと読んだ。1巻目を読んだときのような衝撃はないが、柔らかくジャブ、ボディブローのような感じで効いてくるシリーズ。いずれにせよ、私の人生の3分の1は紛れもなくリアルレコードの世界だった。プログレのレコードジャケットを開くときのワクワク感が、未だに忘れられない。ジャケ買いという言葉もあったが、今回の作品のように、演奏者、作曲者、収集家・ファン・マニア、海賊版を含む制作者の側の思惑、背景、ほろ苦い青春をちらりとでも垣間見たい気持ちで、つい読んでしまうのか。今やレコード達に針を置くことも無いのに。2025/08/25
のぶのぶ
32
音楽を聞くことも好きで、リアルタイムでレコードを聞いていた世代で、このところレコードも再度、楽しむようになった。1話1話で読み切り、なんと月面でのレコードプレス(レコード作り)の話もある。興味深いのはブート盤(海賊盤)の録音の仕方。違法ではあるが、その時にしか聞くことができないことが多いが記録されるのは嬉しくもある。また、母親の音楽を求めて故郷の国に探しに行く息子。どちらも、生で聞くライヴの音や実際に見た風景で、満足していく。ライヴの感覚はレコードでは味わえないもの。レコードも良いが、リアルも良い。2025/03/10
阿部義彦
26
発売日より一日早くフライングゲット!久しぶりに音楽にまつわる物語を楽しみました。最初と最後の話は、ミヤマレコードの暦実さんと腐れ縁の麻耶奈ちゃんにまつわる旅の話、麻耶奈ちゃんはパジャール語をマスターしとうとうパジャールへ。本巻では「旅」がテーマ。ニッキに海で助けられた眼鏡ッ娘、未来でダイナーを守るアンドロイドも、そしてロックが禁じられてる国で奮闘するラナを始め懐かしいメンバー達も再登場、そして又新たな面子も入り交じっての悲喜交々。暦実ちゃんの愛聴盤に鈴木さえ子があるのがジイジにはポイント高い!2025/02/19