内容説明
未完成の曲には、未完に終わった理由と経緯が秘められている。たとえば、作曲家が亡くなったために未完成となった曲でも、実際は完成させる時間があったのに何年も放っておかれた曲がある。ではなぜ、放っておかれたのか?本書ではこうした「未完成の事情」を6つの作品について探っていく。なぜ未完なのか、なぜ未完なのに名曲として演奏されるのか?音楽に秘められた人間ドラマを知ることで、名曲のイメージが覆される。
目次
第1話 シューベルト“未完成交響曲”―音楽史上最大のミステリ
第2話 ブルックナー交響曲第九番―完成しながらも「未完成」にされた曲
第3話 マーラー交響曲第十番―「伝説」にまみれた未完成
第4話 ショスタコーヴィチ“オランゴ”―抹殺された未完成オペラ
第5話 プッチーニ“トゥーランドット”―「未完成版」での初演
第6話 モーツァルトレクイエム―二重のゴーストライターが生んだ曲
著者等紹介
中川右介[ナカガワユウスケ]
1960年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。『クラシックジャーナル』編集長。膨大な資料を丹念にあたり、これまで埋もれてきた史実をひとつひとつ紡ぎ合わせながら新たな事実の構築を行なう執筆スタイルで人気を博す。クラシック音楽への造詣の深さはもとより、歌謡曲、映画、歌舞伎など多方面で活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
25
シューベルトの場合、あの映画のようなロマンチックな物語さえ仮託されるのだが、実際には、多くの未完成作品には、経済的事情がからんでいる。というのが現実らしい。プッチーニの遺作は、トスカニーニとムッソリーニの対立までからんでいるというから、一歩間違えば、もはやただでは済まない。作曲家も芸術世界ばかりには生きていられないということか。。。シューベルトも実は、というのが、最後の最後、「あとがきにかえて」にも書かれてあって、音楽史の謎解きの結果は、きわめてリアリスティックであることを認識。2014/07/29
いりあ
21
シューベルトの交響曲第7番"未完成"やモーツァルトの"レクイエム"など、クラシックには数々の未完成な作品があります。その経緯にまつわる伝説は数々ありますが、それらは本当なのか?という点をミステリー仕立てで紹介しています。本書では、上記2名に加え、ブルックナー、マーラー、ショスタコーヴィチ、プッチーニを取り上げています。クラシックのガイド本はたくさんありますが、こういう切り口の本は珍しいと思います。未完成の秘話に思い入れのある人にはオススメできません。推理過程が作品によってはちょっと強引なところもあります。2013/03/06
叛逆のくりぃむ
7
作曲家の未完成作品の謎を解き明かす書。ショスターコーヴィッチの未完成作品は私もその存在を知らなかつたので驚いた。しかし滅茶苦茶サイケデリックな内容…。2014/03/27
どら猫さとっち
4
中川さんのクラシック音楽に関する本は、大変興味深く面白い。だから一気に読んでいくのである。今回のテーマ『未完成』は、シューベルトだけでなく、ブルックナーやマーラー、ショスタコーヴィチとプッチーニのオペラ、モーツァルトのレクイエムに鋭く迫っている。“音楽史ミステリ”とあるだけで、なぜこのような形で演奏されているかがわかる。それにしても、作曲家にもいろんな事情があるだけに、完成に至らなかった作品があるのは、さぞ悔しかっただろう。そんな作曲家たちの苦悩や、その周囲の人たちの思惑が入り乱れたドラマとして読めば、あ2013/01/14
めぐみこ
3
クラシック音楽の中の、未完成なのに演奏され名曲とされる6曲の事情を読み解く本。シューベルト、ブルックナー、マーラー、ショスタコーヴィチ、プッチーニ、モーツァルト…有名な名前がずらりと並んで壮観。定説といえど事実と限らないのが面白い。確かに死を予感していたからだとか、ベートーベンにならった「九のジンクス」だとか、そういった説の方が浪漫があって流布されやすそうだ。様々な資料から「なぜ未完成となったのか」を紐解いてゆくと、案外味気ない真相だったりするのだった。2019/12/18
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