内容説明
残された言葉があれば、わたしたちは生きていける―惜しまれて逝った偉才・井上ひさしは、庶民の目線をつらぬき、人を、家族を、社会を、国家を、戦争を、平和をえがきつづけた。わたしたちを魅了する代表的な作品から、「希望としての笑い」をキイワードに、親交のあった文芸評論家が哀悼の意をこめて書き下ろす、決定版「井上ひさしの世界」。
目次
はじめに 希望としての笑い―井上ひさしが求めたもの
第1章 同時代と共振し、同時代を一歩踏みだす―格闘
第2章 言語遊戯者の騒乱へ、転倒へ、覚醒へ―誕生
第3章 言葉から集団、国家までを視野にいれる―世界
第4章 フツー人の戦後史と、これからのたたかい方―主体
第5章 世界をゆさぶり、笑いをもたらす表現のたえまなき模索―表現
おわりに ふたたび希望としての笑い―井上ひさしから引き継ぐ
著者等紹介
高橋敏夫[タカハシトシオ]
1952年、香川県生まれ。文芸評論家。早稲田大学文学部卒業、同大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、早稲田大学文学部・大学院教授。専門は近現代日本文学。学生時代から文芸評論家として注目を集める。文学にとどまらず、演劇、哲学、漫画、映画などを通し、現在の文化を横断する批評を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヨー
8
読んでいると井上ひさし作品を きちんと読みたくなってくる一冊。 井上さんの世代だから書けた本を もう一度手に取ってみたくなった2017/05/29
けんとまん1007
3
改めて、井上ひさしさんの凄さがわかったように思う。一番好きな作家でもある。一時期、集中的に読んだ頃もあった。装丁にもあるとおり、むずかしいことをやさしく・・・・と続く、井上さんの言葉に触れたとき、さすがと思うと同時に、やられたとも思った。そして、この本に触れることで、それぞれの深みも増したように思う。最後のところが凄いと思った。柔和な表情でありながら、眼力だけがやたらと力強いということ。周辺からの視点。最近、国民のためとか国益のためとかいう言葉が目立つが、その意味するところは明らかだ。2013/04/27
ポチ
2
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく…」このおかげで馬鹿な私にも理解し、楽しめ、胸に刺さる戯曲を堪能する事ができました。こんな話を書かれる人ってなかなかいないですし、希有な方だったんだなと思います。井上さんの人生と作品を余す事なく書かれ、笑いに着眼されたのは面白かったです。題材だけみると重いものも多々ありますが、笑い所があるのも井上作品の特徴でしたね。まだ見ていない作品に興味もわきますし、高橋先生の考えは面白いものはあります。ですが、何より本当に井上さんはいないのだなと実感してしまいました。2013/12/06
yyrn
2
井上ひさしの本は好きなのだが・・・。昔は評論家の文章をフムフムそういうものなのかと感心しながら読んでいたが、今はそんなに感心はしない。そんな意味が本当にあるのか、深読みしすぎだろう、一読して分からない意図は無意味ではないか、と思うようになった。コレもそう。著者は最期の戯曲「ムサシ」で怒りの連鎖を断ち切る勇気について絶賛しているが、以前「ムサシ」を読んだがそこまでは感じられなかった。そんな深い意図があるというなら、テレビドラマの「水戸黄門」にも深い意図は十分あると思うのだが。2013/12/03
rikoyy
2
久しぶりに『不忠臣蔵』や『東京セブンローズ』を読みたくなった。あと、戯曲はやはり、宝石のような名言がざくざくですね。2011/01/05