内容説明
「異常豊漁は地震の前兆」「庭の南天は災いを避ける」―。わたしたちの身辺でとりざたされる俗信には、災厄の予兆を感知し、日々の不安を除く生活の知と技がこめられている。さりげない日常に息づく、庶民の想像力と心のくせが凝縮した言い伝えといえるだろう。家屋敷、生活道具、自然災害にまつわる膨大な俗信資料を整理し、悪霊・境界・流言などについて、伝承の背後に広がる民俗世界とその意味をさぐる。
目次
1 家屋敷と俗信(生死と境界の空間―屋根と床下;植物と家の盛衰―庭木の吉凶;他界への出入り口―井戸)
2 生活道具と俗信(人生の節目を表象―箒;祓う・拒む・鎮める―箕;禁忌と魔除けの呪具―鍋;欺く・招く・乞う―柄杓)
3 災害と俗信(地震と唱え言;幕末土佐の人と動物―『真覚寺日記』から)
著者等紹介
常光徹[ツネミツトオル]
1948年、高知県生まれ。國學院大学卒業。国立歴史民俗博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。博士(民俗学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミエル
20
魔除けにフューチャーした民俗学本。住居、道具に纏わる様々なパーツ、様々な地域の慣習を紹介する形式。そのためまとまりが悪く雑多な印象は否めない。でも取っ掛りとしては良いのかも。祖父母の言ってたあの謎のタブーに関する文言ってなんの意味だったんだ?の答え探しにはなるかも。死人が生き返らないように刃物を置いたり箒を逆さにしたり、現代までちゃんと残ってる謎の風習の意味がわかるかも。2020/03/20
じじちょん
6
俗信に焦点をあて、著者がこれまで発表したものに書き下ろしを付け加え、編集しなおした本。 家屋、植木、ザルや鍋など生活道具にまつわる「迷信」と言われるものがつぶさに収録されている。理由を問うと、予想される結末が簡単にあるだけ、というのはどの地方も似ているなと思った。ありえない事でも、当時はそれで筋が通っており、一定数は信じて伝承されていたんだな、と。 迷信に惑わされる状況を冷静に見る人もいた、という記述があり興味深かった。2019/12/09
えびちり
5
積読本消化中。俗信、まじないが各地方ごとの特色を持って紹介されていて、おもしろい。禁忌が地方によって逆になっていたり、今まで見過ごしていた事柄も「ああそうか」と思い当たるまじないであることもあり、それを拾い上げるだけでもわくわくしました。語呂合わせというよりそれは親父ギャグでは…と少し遠い目になったりもして、興味深く読みました。現代まで残るにはそれなりの理由があるのですね。2023/07/05
メイロング
5
タイトルだけで面白さ確定。新書より少しガチめ。こうやって全国の俗信を並べてみると、めんどくさくて家は建てられないし木も植えられない。どうしてこんな俗信が生まれたのかをほどいていくと、妖怪の発生までほどけていって、その本質が消失してしまう気がしてさびしい。ところでルンバとかスマートスピーカーに俗信って生まれるんですかね。井上静照さんのTwitterをフォローしたい。2019/08/17
たろーたん
4
人間というのは、ただのモノに様々な意味を付与する生き物なのだな、と読んで思った。屋根、縁側、床下と様々な意味を持たせる。屋根の上に像を乗せたりするし、屋根の上で烏が鳴くのは凶兆とするのは全国共通らしい。また縁側からのモノの出し入れをすることを嫌う所は多く、一生帰ってこれないや死霊との縁切りの機能を持たせられる。印象に残った魔除け道具は「箒」だ。履き出すや追い出すという意味があるらしく、出産のときに使ったり、死者に使ったりできるらしい。2023/01/21