内容説明
律令国家が張りめぐらせた道路網。それらは今も古代の記憶を湛え、全国各地にその姿を留めている。平将門の乱の記憶を伝える関東の古代道路。海と陸の道が交わる石川県津幡町。東海道と東山道が出合う福島県棚倉町。八幡神も通った大分県中津市の道路…。謎に満ちた古代道路は、当時の社会をどう変貌させ、現代にどんな影響を与えたのか。道路を行き交った人々の視点から、古代道路の生き生きとした姿を鮮やかに蘇らせる。
目次
序章 まっすぐな道
第1章 駅路と農民―駅制を支えた人たちとその労苦
第2章 東海道の大国―常陸国の駅路と将門の乱
第3章 日本海の海上交通と駅路―加茂遺跡にみる地方支配の姿
第4章 地域社会と駅路―福島の古代交通を考える
第5章 今なお残る古代の駅路―八幡大神と古代が残る町・中津
終章 駅路と地域社会
著者等紹介
近江俊秀[オウミトシヒデ]
1966年、宮城県石巻市生まれ。1988年、奈良大学文学部文化財学科卒業。奈良県立橿原考古学研究所主任研究員を経て、文化庁入庁。現在、文化庁文化財部記念物課埋蔵文化財部門に勤務。文化庁文化財調査官。専門は日本古代交通史。著作に『道が語る日本古代史』(朝日新聞出版・第1回古代歴史文化賞「なら賞」受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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波 環
5
橿考研出身の先生の割に?発掘調査ばかりではなく風土記などの文字資料、地名の復元による地理的アプローチ、条里条坊など、広い分野の資料で古代の交通路を復元していてわかりやすかった。官制の道路を作ったとしても使う側の必要性により維持管理の優先度が違うのは昔も今も同じ。どうなる北海道新幹線!海路水路川も結構使われていたんだなあ、の印象が残った。2015/01/10
mopinfish
4
古代の交通・物流・情報伝達というインフラを担った駅路。律令制とともに整備され、平安時代後期に廃れた駅制を題材に、今も残す各地の道を考察した歴史書。常陸国における平将門の乱時の転戦の様子を考察した章が特に興味深く読みました。平将門が迅速に関東を平定していった背景には駅路の存在が不可欠だった。2023/08/31
mfmf
3
タイトルからのイメージとしては奈良か京都近郊の道の話かと思ったが、平将門の乱や会津、宇佐八幡宮等地方の道のあり方に重きが置かれていた。古代社会を想像するにあたって、中々興味深い視点だった。古代においても道というものは重要で、現代における高速道路とでもいうような中央に繋がる道がしっかりと整備され、沿線住民によって維持され、しかし中央の弱体化等によって廃れていくという顛末は興味深い。2024/04/03
Lila Eule
3
7世紀末から2百数十年間に亘る古代の国道のお話で、延6300km、直線、幅6~10m、16km間隔に駅、駅は宿泊可、規程数の馬と要員常備だったそうで、奈良、平安時代の律令国家の実力には驚きます。人、物、米、文明の流通・伝播・軍事効果は大きく、制度が廃れた後も道としての効能は計り知れないと。但し、制度維持した農民の苦しみは避けられず、政治的、経済的余波も大きかったそうです。佐藤健太郎氏の「ふしぎな国道」も面白かったですが、本書は国道の原型でした。古代人のダイナミックな活動実態がわかりとても面白かったです。2015/03/07
HMax
3
古代の道路は、都大路を除けば獣道に毛が生えたようなものだろうと思っていたのですが、幅員10mもある道路であったということに驚きました。 それに、当時の様子が文書で残っており、納税後の帰国時に路上で倒れる様な事態を防ごうとしたという事実までわかっているということにも感動しました。 2015/01/26