出版社内容情報
天智天皇没後、その後継をめぐって起きた古代最大の内乱、壬申の乱。これに勝利して皇位についた天武天皇は、『日本書紀』巻第28の「壬申紀」をどう描かせたか。皇位継承の正当を謳うために仕組まれた虚構を解く。
内容説明
天智天皇没後、その後継をめぐり大海人皇子と大友皇子とのあいだに起きた古代最大の内乱、壬申の乱。これに勝利して皇位についた天武天皇は、編纂を命じた『日本書紀』の巻第28「壬申紀」をどう描かせたか。実録とみられてきたこの「壬申紀」は、中国的な王朝交替というフィクションのもと、自らを漢の劉邦になぞらえるなど、皇位継承の正当性を謳う天武の意図と構想に貫かれていた。『日本書紀』に仕組まれたその企てを明かす。
目次
第1章 壬申紀をどう読むか(内乱の原因―皇位継承問題の真相;天智紀の虚構性)
第2章 壬申紀を読みなおす(大津退去;吉野脱出;天下二分;天神望拝;皇子不従;総帥高市;倭京奇襲;赤色兵士;瀬田決戦;吹負奮戦;県主託宣;有効自死)
第3章 『日本書紀』の構想力(王政復古―乙巳の変;禅譲―継体新王朝の誕生;王朝交替の証明―仁徳から武烈へ;王朝交替の前提―神武から応神へ)
著者等紹介
遠山美都男[トオヤマミツオ]
1957年生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科博士後期課程中退。博士(史学)。専攻は日本古代史。現在、学習院大学・立教大学・日本大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mazda
21
日本書紀、古事記を編纂したという意味で、持統天皇と並んで大きな実績を残した天皇といえると思います。2016/08/13
Emkay
16
それまでの倭国の大王を天皇と呼び、日本書紀の編纂を命じ、倭から日本へと大転換をもたらした天武天皇。壬申の乱の記述を読み解いてその意図を探る。壬申記の描写が『史記』等の中国の故事をなぞり、始皇帝ー胡亥ー劉邦の関係に天智ー大友皇子ー天武を重ね合わせようとしたことを再三指摘する。壬申記以前の歴史編纂の裏には、継体天皇から王の世襲が始まったこと、大化の改新によって天智が継体から続く王家が復活したこと、神武~応神の時代と仁徳以後の時代の分断、仁徳以後の描写にも中国の故事をなぞった部分があるという指摘は興味深かった。2019/09/18
はちめ
9
遠山壬申の乱論の中心をなす、大海人皇子には皇位継承権がなかった論には賛同できないが、壬申記が史記を元に天武天皇を劉邦になぞらえて書かれているというのは本当だと思う。近江朝の佞臣に責任をかぶせる論にも組みできないが、壬申記を批判的に読み込むという点においては参考になった。後半部の日本書紀論は理解できなかった。☆☆☆★2020/06/21
MrO
4
皇極天皇に続く黒幕第二弾ですな 2020/05/21
asanosatonoko
3
中公文庫の日本の歴史シリーズを読んで、勝手に日本古代史のヒーローだと思った天武天皇について詳しく知りたくなって買ったが、ほぼ知ってる内容だった。研究資料も限られて、革新的な異説が出るような研究ができる時代じゃないのかも。もうちょっといろいろ探してみます。2015/01/07