出版社内容情報
出版文化が発達した江戸期には、「発禁本」が多数生み出された。ご公儀による出版統制はどのように行われたのか。好色本や戦国歴史物語、仮想戦記など、処分対象となった書物の悲喜劇に満ちた成立事情に迫る!
内容説明
出版文化が発達した江戸期には、好色本や戦国歴史物語、仮想戦記などの「発禁本」が数多く生み出された。出版統制・検閲といったかたちで情報をコントロールしていくご公儀の「事情」、危険を冒してもなお世の中に何かを発信したいという作者たちの「欲望」とそのための「偽装」。悲喜劇に満ちた個々の作品の成立事情を探り、近世史の新たな一面を明らかにする。
目次
第1章 発禁のシステム
第2章 「行き過ぎた」好色本
第3章 検閲が生み出す表現の「自由」
第4章 戦国歴史物語の実態
第5章 学者たちの考証と歴史の捏造
第6章 取り締まられた仮想戦記
第7章 統制を乗り越えて
著者等紹介
井上泰至[イノウエヤスシ]
1961年、京都市生まれ。防衛大学校教授。専門は江戸文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
41
江戸時代の発禁本自体ではなく、そのシステムに主眼を置いた一冊。表紙から好色本が主に扱われているのかと思ったがそれはほとんど出てこず、歴史物や仮想戦記といった幕府の屋台骨に関わる物が主として扱われている。その歴史物も武家が自家の手柄を記述した内容から、司馬遼太郎の『関ヶ原』の元ネタになった本や仮想戦記は『海国兵談』を下敷きにしたおろしゃ成敗等、始めて読む話題が満載。幕府がどのように精緻な検閲制度を敷いていたか、また庶民はそれに対してどのような対策をとっていたかもきちんと記述され興味深く読むことができた。2013/08/18
Koning
16
江戸期の禁書についてのまじめな一冊。所謂好色ものも禁じられていたがそれよりも政治的(特に徳川の封建制度を揺るがしかねないようなもの)への禁忌はなかなかに厳しいというのが分かる。しかし、江戸時代の仮想戦記が発禁とは(引用される海国兵談がアウトだったからその思想をかなり色濃く受け継ぐそれもアウトってのは良くわかるんだけど、なんか結構読みたくなって困る)。で、禁書指定で業者を摘発したら海賊版がたーんと出ちゃったよ!とか中々に今もありそうな事例も多くてちょっと楽しくなる。しかし本自体はこの手の論文に慣れていないと2013/11/19
ぼのまり
7
「発禁本」という響きは『エロ』をどうしても想像してしまうが、どちらかというと徳川家や家臣に関する書物、仮想軍記といったものが対象になったらしい。残された史料から、そういった書物の作者の心情を読み取り、発禁にした理由を分析することで、違った観点で江戸幕府の視点を捉えることができるように思う。表紙の春画とはちょっとイメージが違うかもしれない。2013/08/23
tatamijin
1
同著者の「近世刊行軍書論」が非常に面白かったので購入。 残念ながら本書の内容の半分程度は「軍書論」にも所載の論文を無理やりツギハギしたものだった。タイトルや表紙と内容の乖離は避けられず一冊の本としての完成度はかなり低く感じた。本書では唐突に出てくるマイナーな人物・著作も「軍書論」の方では段階を追って丁寧に紹介されているので、興味ある方はぜひ「軍書論」の方を読んでほしい。2015/05/28
橘 劫
1
メモ:多分この著者の意図にそぐわぬ形で読了した。出版統制をしてもそれに順応した新ジャンルが生まれる。2015/01/20