内容説明
日本文化の真髄とされる茶の湯。従来の茶道史は、伝承にもとづいてその成立を論じ、茶の湯の美学・思想を文化史的に跡づけようとしてきた。これに対して本書は、点前・作法の視点から、闘茶、一服一銭の茶屋、草庵の茶、侘数寄の茶、家元制の一子相伝など、「わび茶」の成立と発展の歴史を解明、はじめて茶の湯の具体的な変遷を明らかにした。わび茶の歴史を全面的に塗り替える、まったく新しい茶道史の誕生。
目次
第1章 中国の茶と日本への伝来
第2章 茶の湯以前
第3章 茶の湯の成立
第4章 茶の湯の大成
第5章 茶道への展開
第6章 近代の茶道
著者等紹介
神津朝夫[コウズアサオ]
1953年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。早稲田大学大学院・帝塚山大学大学院修了。博士(学術)。その間、ドイツ・マンハイム大学に二年間遊学。専攻は日本文化史・茶道史。大学教員を経て、現在は著述業・帝塚山大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mayu
10
闘茶について調べようと思って読んだのですが、予想以上に面白くて、著者の他の作品も読みたくなりました。著者がおっしゃっているように「観念的・情緒的な言辞をつらねて茶道をいたずらに精神化してしまう傾向」にうんざりしている方にはぜひ読んでみて頂きたいなと…。もっとシンプルかつ実用的な理由があるはず、と常々思っていたので、非常に共感、納得できる内容でした。現代の点前や生活様式からこじつけて考えると間違えた解釈をしてしまうんだなと。逆に今まで常識(少なくとも定説)だと思っていたことを覆される内容も多く、2019/12/05
アメヲトコ
6
お茶の伝来から近代の茶道までの茶の湯の通史。あくまでも史料に即した叙述に徹することで、現在まことしやかに語られている茶の湯の「伝統」や通説をどんどん覆していくのが痛快。茶碗を回す作法なんかも新しかったのね。気負いのある文体はご愛敬。全般にある程度の基礎知識を前提とする内容なので、私のような素人にとってはもう少し図版があるとありがたかったところ。2017/07/27
OKKO (o▽n)v 終活中
4
図書館 ◆最後のインタビュー取材の課題のために、ニワカ仕込目指して借り借り ◆と、イヤイヤ借りてきた感じだったが、読んだら面白かった! 特に、家元制度が始まったそのワケは、茶の湯ブームが沸騰しちゃって街にへたくそなお点前が蔓延し、さらにはへたくその中から師範を名乗る者たちが登場し、これじゃいかんと千家はじめ正調茶の湯界が立ち上がった……ということらしい。家元制度を独占的でいやなものと捉えるか、それともイノベーションしつつ伝統を守る茶の湯の担い手とみるか、それは考え方次第でもあるが、私としてはとにかく納得。2016/02/10
in medio tutissimus ibis.
1
それまで派手好みの唐物趣味だった茶の湯を千利休が侘数寄を打ち立てた――というのが通説だが、そもそも大多数の茶人はそんなお金がないので文字通りの侘びしい数寄だったらしい。茶の湯に限らず、物語や記録に残っているものは案外その方が耳目を集めやすいとか珍しいからとかで実際には例外的なもので、実際には時代を通じて地味なものなのかもしれない。唐物趣味も当時の明で流行の煎茶に背を向け古臭い抹茶と宋代の懐古趣味にふけってたというから、なんとなく信長や秀吉の革新的派手好みのイメージの色眼鏡で戦国時代を見ていたなと自省する。2023/06/18
知降 星人
1
道具や料理を主眼としない茶事をしたとき、亭主と客はそこになにを見いだすのか。どうすれば、あるいはなにによって、主客はともに充実したときを過ごした幸福感、満足感を得られるのか。それこそが、侘数寄が、利休が、茶の湯に求めたものであった。机上の空論ではない「わび茶」の思想が、そこに実体をもって顕現するのではなかろうか。2015/08/01