内容説明
民間習俗の由来を調査するに止まらず、研究成果を援用し、現在の生活を改善しようとした柳田民俗学。だが現代社会で、柳田の姿勢は失われつつある。「家」「モヤヒ」「故郷」「憲法」「伝承」などの領域で、研究者、画家、作家たちが展開した民俗学の具体例を広く取り上げ、柳田民俗学の実践的な課題を近現代史のなかから掘り起こす。柳田民俗学が本来目指したものとは何か。その答えと可能性を追究する一冊。
目次
第1章 『遠野物語』再考
第2章 家
第3章 民俗学が生む“方法”について
第4章 思想への態度
第5章 生活から生まれる論理
第6章 “モヤヒ”の思考
第7章 座談が捉えた思想像
第8章 漂泊と現代
著者等紹介
鶴見太郎[ツルミタロウ]
1965年、京都に生まれる。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。国立民族学博物館外来研究員を経て、早稲田大学文学学術院准教授。専門は日本近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
32
柳田に新しさと現代的な意義を感じさせてくれる、なんか楽しい。◇鶴見はここで、柳田の一人称では語らない。遠野物語はもちろん、農政論や教育論など柳田の書いたもの、影響を受けた民俗学の外の人々、そして外から民俗学に入ってきた人々の行動を通じて、鶴見はとても軽やかなステップで柳田の周りをはねまわり、外輪から柳田の像を作っていく。◇その核は、事実と経験にしっかりと立脚し、抽象的なイデオロギーに逃げない姿勢。だから、戦時下民俗学にスポットがあたってもはしゃぐことなく、戦後もぶれないで済む。転向要らずの、本物の保守だ。2016/04/20
さえきかずひこ
12
戦前・戦中期を中心に思想の如何を問わず、柳田国男を敬慕した人々を端正かつ簡明に描くことで、彼の人物を見る眼の確かさと言語に対する美意識を格調高く浮かび上がらせる小著。作家・中野重治との長きにわたる交流、そして柳田の黒子に徹し続けた民俗学者・橋浦泰雄についての記述がとりわけ印象に残った。入門書としてはいささか物足りない分量だが、著者の柳田に対する真摯な敬意が伝わってくる内容であり、文章も良質なので気軽な気持ちで手に取れる一冊。なんとなく柳田を知ってみたいな、と思っているあなたに、ちょうどいいかもしれません。2019/12/24
あかくま
9
『遠野物語』を全く予備知識なしで読んで面白かったので、柳田国男について少し知りたいと思い、本書を手に取った。もとより、民俗学という視点からではなく、文学作品の並びで『遠野物語』を読んだので、本書の民俗学からの(たぶん研究者にとっては至極まっとうな直球の)アプローチが興味深かった。第八章「漂白と現代」柳田が自らを「半漂泊者」と位置付けていたというくだりには、ちょっと驚く。昨今の、県民性をテーマにした様々な番組を柳田氏が見たら何というだろう・・・などと思いながら読む。2013/08/16
kungyangyi
1
誰かがレビューしていた通り、柳田國男にインスパイアされた人々の話。ためになった。 2021/03/25
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