内容説明
武士は、武力や暴力を背景として政権を握ることができたが、その属性を抑えなければ七百年間もの長期にわたって政権を維持することは不可能であった。殺生を業とした武士だが、武芸に励む武士ばかりでなく、弓矢を捨て、信仰を求めて遁生者となる武士もあった。絵巻『男衾三郎絵詞』をはじめ、説話集、御伽草子、記録、文書などの史料のなかに武士の姿を探り、兵(つわもの)、武士(もののふ)、賊(徒衆)、聖(道者)など多様な中世武士の姿を浮き彫りにする。
目次
序章 武士の群像
第1章 自立と従属
第2章 武家と武士
第3章 宝を求めて
第4章 信仰を求めて
終章 武士の行方
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
左近
0
前半では武士が既存の勢力と繋がりを持ちながら、武力による新しい生き方を探り、仏神など信仰の力も得て社会の一基盤を成す身分となっていったのかが分かりやすく語られている。武士の成り立ちを理解するのにとても良い本だと思う。後半では武士ゆえの行い(殺生、戦など)に無常を感じて出家した武士や、出家しても武士の心性を失わなかった出家者(一遍など)を紹介し、多様な武士のあり方について語っている。武士といっても将軍から家が没落した人間まで様々であり、かえって仏道に適性を見出したものもいるという多様さが面白かった。2013/11/27
いさ
0
平安~鎌倉時代の武士たちがメイン。時代劇などで比較的なじみのある戦国~江戸時代の武士たちのイメージとは、だいぶ違うという印象でした。
ろばみみ
0
中世の日本の混沌ぶりを、その中から産声を上げた武士(兵、つはもの)という存在から糸をほぐしていくように解説している。難しいが生々しい魅力があった。武士を知るにはやはり鎌倉時代前夜が重要なようだ。