内容説明
「霊性」は「宗教意識」の目覚めによって高められる。日本人の思想史・精神史の考察を通じて、日本における「霊性」と「霊学」の流れを再確認し、現代日本の抱える宗教問題を鋭くえぐり出すとともに、危機的状況を乗り越えるべき道を探る挑戦的思索。さらに、今日、「救い」を求める若者の関心を集めている宗教体験や神秘体験によってもたらされる「神」や「仏」や「魔」との出会いを、みずからの体験もふまえて検討、安易な「魔」への興味に警鐘を鳴らすとともに、本来の「霊性」のあり方を提示する。
目次
第1部 もう一つの日本精神史
第2部 宗教体験と霊性
第3部 宗教・修行・情報
第4部 道と霊性と魔
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
14
著書が雑誌等に発表した文章や対談をまとめたもの。書き下ろしではないためか、400ページ以上ある分量の割には読みやすい。論点は多岐にわたるが、神道や神話研究の系譜(平田篤胤、折口信夫)や、近代の東洋・西洋における神秘学、霊性研究の同時代性についての指摘など、大正・昭和期の超能力ブームの知られざる全容を論じる第1·2部は面白い。但し、鎌田氏自身も神主的な修行をしてゐる実践者で、その体験を基点にした議論が、学者としての研究と交差するあたり、面白いがついていきにくい部分も感じた。2020/05/10
マウンテンゴリラ
1
霊性と言えば、鈴木大拙、大拙と言えば仏教、特に禅宗と浄土教、と言うのが、拙いながらの私の認識であった。しかし、本書で言われる霊性という言葉には、明らかに違う意味が込められている。どちらかといえば神道系の宗教学者であり、実践派の宗教者でもある著者によって、より幅の広い霊性の捉え方が示されていると感じられた。それと共に、科学技術一辺倒の認識世界、というかそもそも、その科学の学術的偏狭さにも異を唱えるものでもあり、興味深い内容であった。2022/08/28