内容説明
従来、キリスト教は「原罪」に特徴づけられるヨーロッパの信仰として理解されてきたが、本来のキリスト教は、西洋的な思想とは異なっている。霊魂を肉体から分離させて、その永遠性を説くようなこともしない。もともとのキリスト教は、霊を改め、そして高める場としてこの世の生をとらえてきた。その伝統を守り続けているのがギリシャ正教である。聖書の言葉やドストエフスキイの作品を鍵として、その思想と信仰のあり方の全貌を伝える。
目次
序章 ギリシャ正教とは何か
第1章 人生を見直す人
第2章 神の似姿としての人
第3章 誘惑される人
第4章 死ぬ人
第5章 復活する人
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
5
「『種の起源』と『人間の由来』は、ロシアでも大きな反響を呼んだ。ダーウィンの考えをまともに受けた者たちにドストエフスキイは、地下室の男の口を借りて問いかける…はたして人間の祖先が猿だといわれて、そのまままともに受けてよいのかと『地下室の手記』のなかで問い返し、晩年の『カラマゾフの兄弟』まで人間が猿でないことを実証する努力をおしまなかった。…ドストエフスキイにとって人間が自分を動物のごときものとみなして生活することはいたたまれない。そこで自然科学の提示する法則に自分の意志をあずけてはならないことを強調する」2022/11/05
鏡裕之
0
氏の『ギリシャ正教』を読んでいる人間にとっては、肩すかしの一冊。カトリックとギリシア正教において、神と悪魔の位置づけがどのように違ったのかがわかりやすく解説されているに違いないと期待して読んだら、ドストエフスキーを通しての司祭の説法だった。ひたすら独演会を聞かされている感じで、正直、面白くはなかった。我々は司祭の人間観を知りたいのではない。氏の著作は『ギリシャ正教』が最も優れている。『ギリシャ正教』さえ読めば、あとの著作は出涸らしで説法ばかりなので、読む必要はない。2016/02/28