内容説明
「鬼むかし」は鬼をテーマにした一群の昔話である。それを分類すると、じつに多くの型に分けられる。しかしその原型は、死霊と祖霊が形象化されて鬼になったものである。死霊は、「鬼一口」型の、人間を食べるという恐怖的な鬼になり、祖霊は恐怖とともに恩寵をもった二面性の鬼になった。これに仏教の羅刹鬼や地獄の鬼などが加わり、修験道の山伏や天狗とも結合して、多種多様な「鬼むかし」ができたのである。本書は修験道研究で知られる著者が、その豊富な宗教民俗的知見を生かして、「こぶとり」や「桃太郎」など、鬼をテーマとした昔話を分析し、その根底にある宗教的背景を探究する。昔話研究の新たな成果。
目次
鬼むかし
鬼一口
安達ヶ原の鬼婆
天邪鬼と瓜子姫
牛方山姥と鯖大師
「食わず女房」と女の家
山姥と鉄鎖
「鬼の子小綱」の原点
「地獄白米」(「地蔵浄土」「鬼の浄土」)と地蔵縁起
瘤取り鬼と山伏の延年
「桃太郎」の鬼ヶ島渡り