内容説明
恋ゆえに憎しみの淵に沈む女が蛇体に変身―。幻想文芸に花開く「女が蛇になる物語」はどのように生まれ、物語の世界へと変貌していったのだろうか。古代・中世の仏教説話にみえた女人が蛇に変身する表象は、やがて近世の小説・演劇のなかで様式化されながら、怪異な恋物語へと創り変えられていく。好色と怪異の絶妙なコラボレーション。その足跡を追い求め、江戸怪談が描き出した、一途な執念が生む“恋の魔境”へと読者を誘う。
目次
第1章 江戸怪談までの軌跡(女人蛇体とは何か;愛欲の蛇の発見―仏教唱導の変容)
第2章 創られた女人蛇体―宗教・民俗から都市文芸へ(蛇のいる近江の風景―竜宮・蛇身・性愛;怪異小説のなかの蛇妖)
第3章 婦霊恐怖の系譜と蛇の表象史(近世・蛇帯考―女房の帯が蛇に見える夜;執念の蛇はいかにして演じられたか;鱗形文様の意味)
第4章 怖い女と逃げる男の怪談美(嫉妬の蛇と江戸の生活教訓;自戒する蛇身―道成寺縁起のゆくえ)
第5章 偏愛奇談の時代(生首をいとおしむ女;江戸怪談は恋の魔境をどう描いたか)
著者等紹介
堤邦彦[ツツミクニヒコ]
1953年、東京生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。専攻、近世国文学。京都精華大学人文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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