内容説明
十九世紀にヨーロッパで形成されたインド学。主にサンスクリット語研究を行うインド学は、その後もヨーロッパ中心に推し進められ、「悠久の大地」「貧困にあえぐ人々」といったステレオ・タイプ化された一面的インド観が横行するようになる。しかし、数千といわれる言語が存在し、多様な民族、文化を持つインドをサンスクリット文献=インド文化というこれまでのインド学で理解することはもはや不可能である。多文化主義の重要性が叫ばれる今日、激動する多様性大国インドを理解するのに不可欠な新しいインド論を提示する。
目次
第1章 インド学の誕生―十八世紀末から十九世紀初頭のインド・カルカッタ
第2章 東洋への憧憬―十九世紀前半のヨーロッパ
第3章 アーリヤ人侵入説の登場―十九世紀後半のヨーロッパ
第4章 反「アーリヤ人侵入説」の台頭―二十世紀のインド
第5章 私のインド体験―多様性との出会い
著者等紹介
長田俊樹[オサダトシキ]
1954年生まれ。京都造形芸術大学教授。言語学専攻。84年から90年までインド・ラーンチー大学に留学。少数民族ムンダ人とともに暮らし、ムンダ語やムンダ文化の研究に取り組み、ラーンチー大学より博士号を取得。国際日本文化研究センター助手を経て現職
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感想・レビュー
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よしおか のぼる
1
これもまた、偏った見方ではないだろうか。2024/03/19
in medio tutissimus ibis.
1
インド学とは、西洋や日本において、サンスクリット語文献学である。従って、インド学はインドに行かなくても成立するし、サンスクリット以外のインド文献や口承文化は全く無視されている。本書はこの状況を生み出したインド学発生の経緯をウィリアム・ジョーンズから始め、マックス・ミュラーによるアーリア人言説、特にインド侵入説の是非とヒンドゥーナショナリズムによる批判を紹介する。また、ムンダ人研究者としての著者の来歴を通して、ヒンドゥーやサンスクリット偏重のあるべきインドではなく、多元的なありのままのインドの解明を提言する2019/03/01