内容説明
『長谷雄草紙』の、たとえば、双六の勝負に負けた鬼の男が、長谷雄に約束の女を渡す場面。そこには、三人の表情と衣装、座る配置などから、三人が対面する室内の様子、文人の邸宅らしさの演出にいたるまで、絵師がそこに表現しようとした世界がある。絵巻における表現様式、表現の原理の存在を模索する著者が、絵に描かれたもの、絵が語ろうとしたものをていねいに読み解きながら、失われた中世という時代の絵画の約束事を追い求めた絵画文化論の力作。
目次
序章 漢詩、朗詠、そして注釈
第1章 門前・貴人への視線―絵は語る
第2章 街角・集う職人たちの群像―作り上げられた空間
第3章 楼上・双六の勝負―鬼と対話する装置
第4章 客殿・密室のなかの日常―故実の虚構と表現
第5章 廂の間・男女の交歓―愛と悔いの深層
第6章 路上・鬼退治―不可思議な結末
終章 類話、模写、そして絵巻の変容
著者等紹介
楊暁捷[ヤンショオジェ]
1959年生まれ。中国・北京大学卒業後、京都大学大学院に学ぶ。博士(文学)。日本中世文学専攻。現在、カナダ・カルガリー大学準教授。「文化・遊び・すごろく」で第三回ニューテクノロジー振興懸賞論文優秀賞受賞
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