出版社内容情報
満州と戦後日本。二度の国創りを行った男の「見果てぬ夢」とは。長州の血筋と反共・反ソの記憶、産業開発計画に賭した夢と野望、戦後の岸を支えた満州人脈の光と影――知られざる昭和史を描く渾身のドキュメント!
内容説明
関東軍が描いた「五族協和」「王道楽土」の理想とは裏腹に、法律も行政も未整備だった満州は、岸信介にとって自らの統制経済理論を実践する恰好の実験台だった。東洋一の規模を誇る豊満ダムの建造、鮎川義介率いる日産コンツェルン誘致と満業の創業、甘粕正彦を理事長に抜擢した満映改革―満州での実績と自信を踏み台に、革新官僚から大政治家へと変貌していった巨魁の実像に迫る!
目次
第1章 満州国への道(国務院実業部総務司長に就任;満州は日本の生命線 ほか)
第2章 若き日の岸信介(故郷の山河;曾祖父佐藤信寛 ほか)
第3章 満州から満州国(満蒙は中国の一部か;満州に関心を寄せたアメリカ ほか)
第4章 岸の満州人脈(甘粕正彦と石原莞爾;松岡洋右と鮎川義介 ほか)
第5章 戦争の時代へ(商工次官として復帰;近衛文麿が欲しがった岸 ほか)
著者等紹介
太田尚樹[オオタナオキ]
1941年、東京都生まれ。東海大学名誉教授。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺
4
『満州国演義』を読む前にと思ったが…不愉快な読書だった。一貫して岸を賞賛する視点のみで書かれており、さすがに一々突っ込んでたら時間が足らないくらいだった。満州人脈についてはそれなりに分かったのでそれはよかったがもう少し別の本を読みたかった。 日本が帝国主義をとって戦争をした以上「戦争は勝者が絶対正義」だ。日本が日清戦争と日露戦争で敗戦国を裁かなかったとでも言うのだろうか。2023/02/22
030314
2
満州を第二のアメリカにしようと目論んでいたとは知らなかった。満州がなぜアメリカになれなかったのか、と考えながら、読了。又、岸信介を知り、安倍晋三の考えのルーツを知りたいと思い読んだが、安倍さんは岸家の人間ではないことも理解。2020/09/26
turutaka
1
現在の与党を構成する面々のルーツ(派閥、血筋の両面で)である岸信介を知るために読んでみた。とてつもないバイタリティは血筋と長州の風土が作り上げたのだなぁという感想と、戦後の責任の取り方というものが曖昧だったことが、70年を過ぎた今になってガタがくる要因となったのだと改めて気がつく。サブストーリーを形成する甘粕の生涯も興味深い。ここはまた別の本で追ってみよう。2019/10/02
くらーく
1
船戸与一の満州国演義から。 安倍首相の祖父にあたる岸信介。日米安保条約を結んだ首相として、そして、A級戦犯としては知っていた。 戦前に、これだけの切れ者で大きなことを為した(実験したに近いのかな)人物とは知りませんでした。さぞや、楽しい人生だったのではないかと。それを、孫にどのように伝え聞かせていたのか、興味深いですな。 いろいろと豆知識が得られて、楽しい本でした。2018/05/12
Mann
1
岸信介も満州国も名前以上のことは知らなかった。 昭和30年代の安保闘争のターゲット、「日本を米国の戦争に巻き込もうとしている張本人」として、大半の日本国民の反感を買った首相、くらいの知識。 満州国についても、奉天を中心にしたあの程度の鉄道線路と周辺の権益を、100万人もの軍隊で何故守ろうとしたのか不思議に思っていた程度。満州の産業立国の司令塔岸信介の物語ゆえに、満州国を巡る歴史書、人物列伝にもなっている。読み終わってみて、岸信介、甘粕正彦という人物、侵略戦争という暗い世界の中で英知を注いで祖国に尽くそうと2016/01/07