内容説明
青春から大人への移行期、それは人生のなかで最も楽しく、また切ない季節なのかもしれない―。高校生で角川短歌賞を受賞し、話題となった前歌集『乱反射』から4年、待望の第二歌集。
目次
サリンジャーは死んでしまった
声もたぬ樹
建築物
夕焼けの壁
グランドピアノ
泡
人および動物
成長痛
秋の手摺り
鴉のごとく〔ほか〕
著者等紹介
小島なお[コジマナオ]
1986年東京都生まれ。93年から2年間在米。2004年青山学院高等部在学中に角川短歌賞受賞。2007年コスモス短歌会入会。同年歌集『乱反射』刊行。現代短歌新人賞、梅花文学賞受賞。2009年青山学院大学卒業。現在、会社員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テトラ
32
歌人の20歳から24歳までの作品が収められている。大学卒業、就職、恋愛、そして失恋、老いてゆく家族のこと、この年頃は正体不明の憂鬱に誰しも悩むものなのだろうか。好きな歌を数首書き留めようと思ったけれど、沢山ありすぎて選べないくらいで。卒業して働いて大人になっていくということは、時間が有限であることを少しずつ知らされてゆくことなのだろう。いずれ失ってしまうという意識を持ちながら見渡す世界は、どの季節もどうしようもなく鮮やかで胸を締め付けられる。青春の光と痛み、そんな第二歌集だった。2017/04/29
だいだい(橙)
17
古本で購入。大学生から社会人へと変わる4年間に詠まれた歌。びっくりするほど失恋の歌が多い。まだお若いのにそんなに元彼いい男だったの?と聞きたくなるほど。逆に仕事はつまんないのか、あまり触れられていない。最後の方では生まれて初めての(?)一人暮らし。あまりにも有名な「十メートル地点で悲しみがくる」は一生暗記できそうな愛唱歌。そして妹と母親を詠んだ歌がお茶目でおもしろい。「三十年われより長く生きている母おそろしき笑みを浮かべて」「ムササビのような寝姿恋人がいると思えずわが妹よ」いや、仲いいんでしょうね。(笑)2023/11/19
おはぎ
14
読み終えて、なぜ表題作がこの歌なのか、そしてこの歌を冒頭に置いているかがよくわかる気がする。全体的に青春の終わりのほろ苦さ、切なさ、儚さの漂う印象。第一歌集『乱反射』より明らかに成熟しているのが素人目にも見て取れて、わたしには第二歌集のほうが好み。素直で眩しい歌は、少し苦しくなるので。「ガードレールまたげば秋のてのひらに小さな銀河生まれるような」2022/12/07
かみしの
8
強烈ではない。夏の透き通っていく空気のような中に、ふわふわとした憂鬱が存在している。AというBという直喩が多い気がする。「鳩がふと飛び立ってゆくこの瞬間をこの幸福をいつか忘れる」「満員の電車に潰され吐き出されほんとうにもう疲れてしまった」のような素直なものや、「夕暮れ」のようなコンセプチュアルな連作が好みだった。2017/06/16
Masakazu Kawamoto
7
歌集はめったに読まないけど手にとってすぐにひきこまれました。高校生歌人として知られていた著者の第二歌集。仕事のこと、家族のこと、日常的なことを扱っていてもぐっと一本つきささる視点がありドキっとするとともに考えさせられる歌が多かったです。帯にもなっている歌 「君との恋終わりプールに泳ぎおり十メートル地点で悲しみがくる」 五mでも二十メートルでもダメで、十メートルっていうのが絶妙。「遺伝子学の教科書」の歌、深くてどこか優しい・・・ 2013/03/10