感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
28
私の好きな歌人河野裕子の夫、永田和宏の歌集。ユーモアを感じるもの、しみじみとした味わいのもの、生と死を見つめたものなど多彩な内容で、短歌はやっぱり良いなと思わせてくれる歌集です。私が一番惹かれたのは、妻の河野裕子のことを詠んだ短歌です。ロマンティックで美しいものが多く、この歌人の妻への愛の深さを感じます。「助手席にいるのはいつも君だった黄金丘陵の陽炎を行く」瑞々しい情感を感じる上の句と、エキゾチックな異国の情景を描いた下の句が組み合わさって忘れがたい歌になっています。2024/12/25
Cell 44
2
「どの歌も既視感のなかに竦んでいるこんな日はもう歌ができない」「なんびとも見たることなき不可思議の麒麟というが林立をする」「ゆうぐれに西瓜の種を吐きいだす世界のゆうぐれにびっしりと死者」「落花尊と詠みたる耕衣少しずつ少しずつ人は死の側に寄る」「夕闇は盈ちつつ世界の夕暮れにアボガドロ数の猫ねむるなり」「そこがあなたの岬でもあるというように光翳ろうなかの頬杖」2017/02/20