内容説明
「連合赤軍あさま山荘事件」死刑囚・坂口弘の脳裏に去来するさまざまな時間―。
目次
ダンテ
足音
黒き虹
火口原湖
隙間の春
巡り合ひし人人
著者等紹介
坂口弘[サカグチヒロシ]
1946年11月12日千葉県生まれ。1962年4月木更津高校入学。1965年4月東京水産大学(現・東京海洋大学)入学のち中退。1972年2月28日あさま山荘事件で逮捕。1993年2月19日最高裁で死刑判決(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐうぐう
33
「短歌という詩は、或る立場に立つ〈われ〉が立場にはおさまりきれない〈われ〉へ向かって歩み出す詩である」と解説で佐佐木幸綱は言う。さらに続けて「短歌はつまり、しばしば人間の本音を引き出す」と。1993年から2001年の間に詠まれた歌を収録した本歌集は、確かに坂口弘の本音が垣間見れる。1993年3月17日に最高裁による上告棄却に基づき死刑判決が確定した坂口は、動揺と死の恐怖という怯えを正直に歌として告白する。と同時に、迫り来るリアルな死は、当然のこととして、亡くなった同志達の命と重なっていくはずだ。(つづく)2023/05/10
seer78
6
連合赤軍指導者の一人による歌集。内容は自身の死刑確定からオウム事件、阪神大震災、酒鬼薔薇事件、永山則夫処刑執行などの日本社会を震撼させた出来事について詠んだ歌と、連合赤軍による一連の事件を振り返る「総括」歌群に分かれる。「宗教より/同時代より/吾らより過激なる者の出でし驚き!」「同志らを殺めし小屋に/留守居して/君はこめかみに銃を当てたりと」「途中から/総括の小屋に来し君は/カフカの世界に迷へる目をせり」塀の内から眺める世間の実相も、「総括」の論理も、著者にとって一生を賭けて問い続けるべき対象なのだろう。2012/11/19