出版社内容情報
なぜ、戦争は繰り返されるのか--。歴史探偵の原点、待望の文庫化!
新聞がリードした開戦への道、知られざる東条暗殺計画、幻のソ連の「日本本土侵攻計画」……。半藤一利氏が、今を生きる人々に伝えたいメッセージとは? 戦後70周年に改めて読み直したい名著が待望の文庫化。
第1章 大日本帝国の戦争目的(新聞がリードした開戦への道―伊藤正徳主筆「時事新報」の抵抗
吉田茂の対中国強硬論
大日本帝国の戦争目的―日清・日露戦争の開戦の詔書から落とされたもの
山本五十六が恐れた「衆愚」集団主義
「太平洋戦争ってナーニ?」―歴史は面白い)
第2章 「大艦巨砲」よ、さらば!(ノモンハン事件症候群―南進・対米戦争への道
ルーズベルトの甘い言葉―むなしかった日米首脳会談
海軍は「善玉」なるか?―軍縮なんかクソ喰らえ
「大艦巨砲」よ、さらば!―無用となった戦艦七十九隻
墓標一万六千里―五隻の潜水艦
知られざると東条暗殺計画)
第3章 「最後の聖断」が訴えたもの(歴史の中の長岡空襲と新潟
幻のソ連の「日本本土侵攻計画」
「天皇制を残さなくてはならない」―米国務次官・グルーの見識
スターリンが決断した「シベリア抑留」
「最後の聖断」が訴えたもの
敗戦と「どうせ」「いっそ」「せめて」―日本的ということ
敗戦への道と鈴木貫太郎
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
神在月
11
歴史にはいくつものifがある。ルーズベルトが急死しなかったら、日本は分割統治されていたかもしれないのだ。そうならなかった僥倖を噛み締めざるを得ない。北海道と東北がロシアに、四国と近畿が中国の手に渡っていたらと考えるだけで冷や汗が出る。四国と近畿が今のチベットやウィグルにならない保証はどこにもないのだ。戦争終結までのもたつきを憂いてなぜもっと早く決断が出来なかったのかと後世の我々は批判するが、私はひとまず戦争終結を二度の御聖断という奥の手を使ってでも果たした鈴木貫太郎首相、そして阿南陸相に敬意を表したい。2020/07/17
Yukihiro Nishino
11
歴史探偵と呼ばれる半藤一利氏の昭和史。正直言って途中で読むのをやめ投げ出そうと思った。昭和の軍部の何ともどうしようもなさに、怒りを覚えた。我々は未だにあの戦争をしっかり総括していないと思う。今からでも、個人的な感情やイデオロギー抜きに、客観的な分析をやるべきだろう。2016/05/04
takam
7
「失敗の本質」というタイトルはミスリードの感がある。本著は半藤氏のこれまでの日本の対戦物をまとめた内容になってる。それを踏まえたうえで日本における政治家、軍人、メディア、大衆の行動パターンについて言及している。海外の当時の動向について考察しつつ、日本人の外交音痴っぷりを批判している。氏の考察は自身の戦争経験にも基づいているので、当時の話などが第一人称として登場して面白い。2018/12/16
読書実践家
7
昭和期の日本の海軍力は今の経済大国を思わせる勢いがある。外国人の中で天皇の存在を適切にとらえることができた人はそんなに多くはないことが分かった。2015/12/01
シノウ
6
昭和通史というよりは、半藤さんのエッセーに近い。戦争の始め方も、終わらせ方も日本人の驕りが招いた悲劇だったのではないかと思う。 終戦後の現代、真性悪を軍や戦前の体質に全てを押し付け、自らの国民性や文化、世界に対する歴史史観などを改めようとしない日本人は、再び欺かれまたは自ら進んで戦争もしくは亡国の道を歩むのではないだろうか。2020/03/08