出版社内容情報
複雑な家庭環境のもとで身辺に生起する日常を見つめ続けた網野。東京下町の女の強さや下級娼婦たちの生の断面、さらに技芸に賭ける男女を描いた芝木。戦前の国際結婚の光と影を小説にし女性初の芥川賞を受けた中里。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
277
中里恒子「乗合馬車」のみ。当該作は第8回(1938年下半期)に女性作家としては初めての芥川賞受賞作。実の兄夫婦がモデルであるらしいが、フランス人の女性と結婚した森之助夫婦を中心に、同様の境遇にあった人たち、また当時では珍しかったであろうダブルの女性、菊代を描く。選考委員であった横光利一や室生犀星は絶賛に近いが、どうも素材の目新しさに幻惑されているように思える。分かりにくいし、小説そのものとしての斬新さには欠けるようだ。この頃、まだ小説のどこにも戦争の影が感じられないが、その後は彼らに苦難が待っていた。2016/10/13
遥かなる想い
156
「乗合馬車」:第8回(1938年)芥川賞。 当時としては 珍しかったであろう、 フランス人 アデリヤの振る舞いが 新鮮に 見える。物語自体は 平凡な日常を 描くが、日本人の妻になった アデリヤの憂愁、諦めのようなものの描写が 評価されたらしい。2018/07/22