内容説明
「サールの悪魔」この謎めいた言葉を残し、優歌の兄・良輔が失踪した。彼はコンピュータ上で人工生命進化を研究するうち、「神」の実在に理論的に到達。さらにその意図に気づき、恐怖に駆られたのだ。折しも世界各地では、もはや科学では説明できない現象が頻発。良輔の行方を追ううち、優歌もまた「神」の正体に戦慄する―。膨大な量の超常現象を子細に検討、科学的・合理的に存在しうる「神」の姿を描き出した本格長編SF小説。
著者等紹介
山本弘[ヤマモトヒロシ]
1956年京都府生まれ。1987年、ゲーム創作集団「グループSNE」の一員となり、作家およびゲームデザイナーとしてデビュー。作家活動以外にも、トンデモ本を研究する「と学会」の会長など、その活動は多岐にわたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Rin
57
電子書籍。人間にとっての宗教というものの意味。人が信仰する意味。何を善とし、何を悪とするのか。人は信じたいものしか信じない、見たいものしか見ない。神の存在に、人間の存在。政治に宗教。シミュレーションする側とされる側。その事実がわかったときに、神とコンタクトをとろうとすることの無意味さを感じる。私たちの生き方を神様はみているの?それに答えてくれるか?神様にとっての人間とは?神様がみているからではなく、自分にとっての善悪やどう生きたいかということ。神は沈黙していない。とってもスケールの大きな世界でした。2019/04/14
ソラ
56
凄い作品だった。広げきった風呂敷のたたみ方がまた秀逸。ヨブ記の解釈とか創造神は存在するが尊敬に値しないなど納得のいく終わり方。2013/09/16
Akira
49
★★★★★ この大きな物語の感想をどこからどう書けばいいのでしょう。既存のあらゆる「常識」を覆すと同時に、モヤモヤした「疑問」に対する答えを投げかけた。と、言うべきか?。コンピュータシミュレーションを根幹にして語られて行く、神、宗教、宇宙、超常現象、超能力、歴史、人種問題、差別、戦争…事実なのかフィクションかなんてもう関係ない。人間は合理性で全て考える。最後に主人公が呼びかけた新しいミーム。今後既存のミームとの生存競争が楽しみだ。読了後、とりあえず旧約聖書のヨブ記を読んでみた。凄い凄い本を読んでしまった。2018/03/07
とも
49
★★★★★神とは何か、ということを科学、宗教、心理学、オカルト等多方面から検証し、最終的にひとつの結論を導き出す内容の、よくあるといえばよくあるSFであるが、知識の幅とある程度の深さを、読者にわかりやすく読ませる能力は圧巻といえよう。最終的な結論に、作者のモラルをうかがい知ることも出来、好感も持てる。2014/12/22
きっしぃ
37
下巻。上巻のラストで○○が降ってくるという衝撃の展開から、ぐんぐんと読まされた。圧倒された。世界観が変わってしまいそうな読書体験。自分はとくになんの宗教も信じてないので、余計になるほど、とストンと落ちた。最後のメッセージはとても簡潔で、既読の「詩羽のいる街」もストーリーは全く違えど、感じることは同じだった。山本さんの伝えたいことはこれなんだな。さぁ、私も紗奈ちゃんと一緒にお祈りするかな。2018/03/12