内容説明
この世には殺す人間と殺される人間がいる。自分は前者だ―そう自覚する少年、「僕」。殺人鬼の足跡を辿り、その心に想像を巡らせる「GOTH」の本性を隠し、教室に潜んでいた「僕」だったが、あるとき級友の森野夜に見抜かれる。「その笑顔の作り方を私にも教えてくれない?」という言葉で。人形のような夜の貌と傷跡の刻まれた手首が「僕」の中の何かを呼び覚ます。彼女の秘密に忍び寄った彼が目撃するのは…。圧倒的存在感を放ちつつ如何なるジャンルにも着地しない乙一の、跳躍点というべき一作。「僕」に焦点した三篇を収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
266
夜に続いての同じく連作3篇。こちらは、正しく『僕の章』でした。猟奇性は加速して行っていますが、結局最後は僕が掻っ攫って仕舞う感じなのね。と、言いつつ、最終話は良く分かってないや。時々反芻して考える奴やね。本書シリーズは、角川文庫の初乙一だったのですが。文庫本は文庫レーベル毎に、著者順に並べる派です。角川文庫はパステルカラーの背表紙がええなぁ〜( ¨̮ )。と、思っておりました。乙一さんのは、黒と言うかグレーなのね(らしくて良いけど)……小川洋子さんと恩田陸さんとの間で、めちゃめちゃ浮いてるよ(꒪ω꒪υ)。2023/03/13
mitei
246
リストカットはそこまで集めるのに見つからなかったのが不思議だし、土は中々ついて行けない話だな。2010/07/04
kishikan
212
読み始めたら、夜の章も僕の章も一気でした。GOTH(ゴス)ってGOTHICのことなのかな。ホラーっていうより、猟奇、怪奇的そしてグロさも感じる、ダークファンタジーなんでしょうけど、でも何か幻想的な美の追求みたいなものも感じますね。そこがライトノベルでありながら、いくばくかの反骨精神をぬり込めた乙さんの筆力なのでしょう。主要登場人物の「僕」と「森野夜」のキャラクタ-設定は、凄いの一言。上下巻合わせ6つの短編それぞれ印象深いけど、一文字タイトルの作品、特に犬と土が強烈に美しく冷たい。怖さが平気の方にお薦め!2013/11/20
おしゃべりメガネ
204
面白いのですが『夜の章』に比べると、ドキドキ感が控えめだったような気がします。多分、あえてそういう作風にしているのかもしれませんが。『夜~』はテンポよく、メリハリのきいた展開で読む側を釘づけにしてくれましたが、今作は少しダラけてしまう感じがしなくもなく、いい意味ではアッサリですが、じっくりジワジワとくる乙一ワールドを十分には満喫できなかったような・・・。かといって‘浅い’ワケではなく、しっかりと書かれているので、飽きることはなかったのはさすがです。やっぱりキャラ的にも「夜」のほうが書きやすいのかな。2013/11/16
忠犬じろレポ
179
「僕の章」へ進み残虐な描写が更にアップ。(^^; 「リストカット事件」→「土」と進むにつれ私の理性が麻痺しそうでした。この小説はミステリーなんだと気持ちを整え突き進みました。でも最後の「声」で撃沈されました。さすがミステリー大賞受賞作、全く予想できない展開にやられました。グロいけど読みやすい。ハマる人の気持ちも分かりますね。次は白乙一を読みます。2013/03/27