出版社内容情報
私たちが共通して持つ魔女のイメージはいつ生まれたのか。そもそも魔女とはどのような姿だったのか。人々の暮らしや心情を映し、変容し続けてきた「身近な存在」を読み解く新しい魔女論! 貴重な図版も豊富に収録。
内容説明
黒猫をお供に、ほうきにまたがって空を飛ぶ―わたしたちが共通して持つ魔女のイメージはいつできあがったのか。そもそも人々が思い描いていた魔女とはどんな姿だったのか。ヨーロッパにおける古代の女神崇拝やグリム、メルヘンなどの伝承からその実像を掘り起こし、中世のキリスト教文化の中で弾圧の対象となってしまった過程をたどる。人々の暮らしや心情を映し、変容し続けてきた「身近な存在」を読み解く、新しい魔女論!
目次
第1章 魔女はメルヘンから(よい魔女か、悪い魔女か;ヨーロッパ中魔女だらけ)
第2章 妖精から魔女へ(森にひそむ妖精たち;おばあさんが魔法使いに)
第3章 ほうきと黒猫の受難(魔女狩りの時代;ほうきの民俗学、黒猫の神話学)
著者等紹介
菊地章太[キクチノリタカ]
1959年、横浜市生まれ。筑波大学卒業後、フランス・トゥールーズ神学大学高等研究院留学。現在、東洋大学教授。文学博士。専攻はカトリック神学、比較宗教史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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国士舘大学そっくりおじさん・寺
50
魔女のイメージの歴史。挿絵や写真も多い、敷居が低い啓蒙書である。ほうきは男根を模した物で、元々は逆に房の方を前にして跨がり、柄には媚薬を塗ってエクスタシーを感じていたそうだ。魔女も自慰をするのか。後書きに『魔女の宅急便』の実写版の話があるが、それの便乗本だったのか、やたらに『宅急便』の話題が多い(本書は文庫オリジナルで、角野栄子の原作小説は前年角川文庫に入っている)。故に魔女が出る民話や伝説、バレエや小説の粗筋紹介や図版が多く、水増し感がハンパない本ではあるが、それが普通に面白いのは否めない。2015/10/03
めがねまる
40
角野栄子の「魔女の宅急便」を取っ掛かりに、ヨーロッパの魔女の歴史、魔女が人々にとってどんな存在だったかをわかりやすい口調で教えてくれる。悪いイメージも良いイメージも一緒くたの古い魔女は、人に恵みをもたらす一方命を脅かす古代の神様に似ているという。どんな現象にも理論づけして正体を見ることのできる今と違う、昔の知恵を体現したのが魔女ならば、こんなに魅力的なのも納得いく。魔女狩りは中世より近世に多く、妬みや八つ当たりが原因だったりして想像以上に酷い話だった。手軽に読めて面白い。2016/11/07
へくとぱすかる
36
タイトルそのまま。魔女(とされてしまった人)についての迫害の歴史や、魔女スタイルの小道具である、ほうきや黒猫についての歴史をざっと通観する。最終的に「奥さまは魔女」や「魔女の宅急便」に至って、ようやく「魔女」にも平穏な日々が訪れる。それは男性優位社会での、女性の立場を取り戻す闘いでもあったことが明らかにされる。身につまされる結論です。2014/05/31
TSUBASA
22
古来より童話や物語に登場し、あるいは魔女狩りの暗い歴史を持つ魔女という存在。その魔女の歴史や魔女が持つ道具などについて引用豊かに紹介していく。若干話が飛んだりして「結局、主流の説は何?」と言いたくなるところはあったけど色々と興味深い話だった。本来は生活する上での知識豊かな婦人がベースにあった。そして宗教上の異端迫害や近代科学の萌芽とともに悪しきものとしての色づけがなされていったという。考えれば考えるほど様々な人間の歴史や思想が浮かび上がる。これだから民俗学は面白い。2014/12/01
佐島楓
21
童話や神話などからの引用がページ数に対して多すぎる。もっと学術的なことがあればよかったと思う。2014/07/13