内容説明
長い時を経て日本列島に築かれた文明の本質を、自然科学と人文学の両面から明らかにした寺田寅彦。その鋭い考察は、地震列島に生きる私たちへ、今なお新鮮な衝撃を与え続けている。日本固有の自然風土と科学技術のあり方を問う「日本人の自然観」、災害に対する備えの大切さを説く「天災と国防」、科学を政治の血肉にしなければ日本の発展はないと訴える「政治と科学」ほか、日本人への深い提言が詰まった傑作選。
目次
天災と国防
津浪と人間
流言蜚語
政治と科学
何故泣くか
震災日記より
颱風雑俎
災難雑考
日本人の自然観
著者等紹介
寺田寅彦[テラダトラヒコ]
1878~1935年。東京生まれ(高知県出身)。東京帝国大学物理学科卒業。理学博士。東京帝国大学教授、帝国学士院会員などを歴任。東京帝国大学地震研究所、理化学研究所の研究員としても活躍。物理学者、随筆家、俳人
山折哲雄[ヤマオリテツオ]
1931年生まれ。宗教学者。東北大学文学部印度哲学科卒業。国立歴史民俗博物館教授、国際日本文化研究センター所長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
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はっせー
97
台風のため巣ごもりしているときにピッタリだと思い読んでみた。理系でそして古い本のため読みにくいと思っていたが思った以上に読みやすい。寺田寅彦さん自体が夏目漱石さんを師事していたため文章がうまい。この本はそんな寺田寅彦さんが天災について考えたものをまとめている。その中で面白いと感じる点は日本の科学が実学との結びつきが弱いと感じているところである。寺田さんはどんな科学も実学と結びつけることができると考えており実学と向かないものを排除したいわけではない。日本の科学は植物園で育った珍しい花と同じだと言っていた!2022/09/24
saga
73
明治に生まれ、大正関東大震災を経験し、昭和初期まで活躍した物理学者で、漱石の門人であることで有名な著者。関東大震災が発生した際、建物の構造を冷静に分析して余裕を見せる姿や、外国人が井戸に毒物を入れる、爆弾を炸裂させるというデマに対し、科学知識があれば惑わされないのに……という知見は流石であった。火山活動を含む地震や、台風を筆頭にする風水害と日本人というテーマでの各随筆を、非常に興味深く読ませてもらった。和辻哲郎の『風土』も読んでみたい。2021/04/09
keroppi
72
「科学と文学」を読んで、寺田寅彦のものを見る目の鋭さに感銘を受け、災害について記したこの本を読む。昭和初期の文章とは思えない内容。昨今の日本における災害を見ていて、この頃と大きくは変わっていないことを感じる。科学者の冷静な目で現実を見つめ、日本というものを守るためには、災害にきちんと向き合い、そういう体制をとることが大切だと訴える。「天災は忘れた頃来る」というのは、寺田寅彦の言葉と言われるが、この随筆集は、その意味するところを伝えている。2020/08/30
壱萬参仟縁
51
ラスキン「一抹の悲哀を含まないものに真の美はあり得ない」と。(50ページ)。「何故泣くか」より。美とは悲しいものだ。明日は不倫の悲しさを番組にする。不倫は家族をだめにする。自分は良くっても。2022/01/27
tomi
41
関東大震災や室戸台風の甚大な被害を受けた昭和初期に書かれた、寺田寅彦の天災に関する随筆集。津波に罹災し災害記念碑を建てても月日の流れとともに忘れ去られてゆく(「津浪と人間」)。無難だった古い集落に対して、非常時に対する考慮を抜きに発達した新集落が台風の被害を受けた。近代化とともに「相地術」を忘れてしまったと嘆く(「颱風雑俎」)。災害に対する物理学者でもある寅彦の警鐘は、平成の世になってもよく聞く論説でもある。2016/01/25