内容説明
13世紀の中央ユーラシアに突如現れ、史上最大の版図を創出したモンゴル。東西の国と文明を結ぶ一方、破壊や殺戮のイメージが先行し、やがて歴史の闇へ姿を消した大帝国の真実とは。ケシク制ほか独特の人間組織、国際商業ネットワークを利用した通商物流網、自治や実力主義を認める拠点支配―厖大な文献や史料を紐解き、その時代と実像に迫る。西欧中心の文明論や史観を覆し、新たな世界史像を提示する画期的モンゴル史!
目次
序章 失われた時をもとめて
第1章 中央ユーラシア世界
第2章 モンゴルの出現
第3章 西暦一二六〇年
第4章 あたらしい世界国家像
終章 薄明のなかへ
著者等紹介
杉山正明[スギヤママサアキ]
1952年、静岡県生まれ。京都大学大学院文学研究科教授。京都大学文学部卒業後、79年に同大学大学院博士課程修了。主要研究テーマはモンゴル時代史。95年に『クビライの挑戦』(講談社学術文庫)でサントリー学芸賞、2003年に司馬遼太郎賞、06年に紫綬褒章、07年に『モンゴル帝国と大元ウルス』(京都大学学術出版会)で日本学士院賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ロビン
20
チンギス・カンとフビライ・カンを中心に、彼らの血族間の争いや金、遼、南宋、インドのマムルーク朝との戦いなど、一時征西はポーランドまで至ったという、13世紀にユーラシア大陸を席巻したモンゴル帝国について「野蛮な遊牧民族」というイメージを覆す数々の事実が書かれた本。モンゴルは信仰の自由を認め、人材登用は人種や国籍に拘らない実力主義をとり、緻密な戦術と統率された組織を持っていた。モンゴル帝国がムスリム商人と深い関係を持っていたことや、通行税を軽くしてユーラシアに一大経済圏を構築していたことなどは初めて知った。2023/10/30
アルカリオン
13
「大航海時代」という用語は日本の学者による造語なので英語にしても通じない▼武人ティムールが興した、中央アジアを中心とする最初で最後の大帝国がティムール朝。およそ100年後の君主バーブルはティムール朝最後の皇帝であるとともにムガル朝の最初の皇帝となった▼ティムール朝は周辺の遊牧族の侵攻により帝都サマルカンドを失った。バーブルは新天地を南にもとめ、北インドに進攻し、ムガル朝を築いた。2021/10/05
takam
11
遊牧民族が世界を統治した時代は、世界が狭くなった時代にも感じる。民族レベルの対立というよりも、モンゴルは領土を広く広くと拡大していった感じだ。民族ごとの差別はなく、世界の交流が盛んだった雰囲気。戦乱は絶えなかったろうが、ロマンを感じる。2020/07/20
詩音
6
面白かった!中国ドラマの「フビライ・ハン」を見てからの読書だから、余計に面白かったのかもしれないが、世界史で学ぶ点と点がユーラシア大陸をまたにかけて、世界中を動かしていったという壮大さに驚き。遊牧騎馬民族だからこそのフットワークなのか?!チンギス・ハーンもすごいが、日本では敵役のフビライって、軍事的にも政治的にも凄すぎる人物だった(笑)。民族、宗教にこだわらないおおらかさと、人物登用の上手さがあれだけの大帝国を作り上げたんだなあ、と。元が中国を引き払う潔さも、結構鮮やか。2019/07/31
yamasaki
5
遊牧民族の歴史を淡々と述べた第一章は挫折しそうになったけど、第二章のテムジンの話からは面白く読めた。多民俗でうまくやってたモンゴルやオスマンの話を聞くと、その後の現在まで至る民族主義の世界が切なく思える。欧州中心史観への異議も同意。これまで、いわゆる大航海時代の起点をオスマンのコンスタンティノープル攻略から理解していたんだけど、モンゴル時代の経済発展からの流れで欧州の勃興を考えるのも面白いなと思った。2024/01/21