内容説明
尊王攘夷運動の急先鋒・高杉晋作。幕末動乱を駆け抜けた英雄として、痛快な側面ばかりが伝えられる長州藩士の素顔とは。「書き魔」の晋作が残した、手紙や日記、詩歌の草稿など、切実な思いが詰まった多くの史料を紹介。国や藩を背負った青年武士は何に悩み、何に怒り、何に喜び、闘い続けたのか―。いまだ語られることのなかった等身大の高杉晋作を掘り起こし、新たなる実像を浮かび上がらせる本格評伝!
目次
第1章 出自
第2章 松陰との出会い
第3章 マサとの結婚
第4章 海外へ
第5章 内憂外患
第6章 変革へのエネルギー
第7章 決起する
第8章 「面白きこともなき世に…」
著者等紹介
一坂太郎[イチサカタロウ]
1966年、兵庫県生まれ。大正大学史学科卒。東行記念館学芸員を務めるが同館閉館により退職。現在、萩博物館特別学芸員・至誠館大学特任教授・防府天満宮歴史館顧問。講演、テレビ出演も多い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ち~
21
今作では、高杉家のルーツを詳しく辿っていること、維新後の晋作の妹、姪のその後が書かれているのが興味深かったです。上海を見た後では仕方のないことではあるけれど、アメリカ人と話をした際、「アメリカでは士と民は分かれていない」と教えられ、信じられずに裏があるのでは?と勘ぐっているのがおもしろかった。2015/05/07
はちこう
14
小説のようなテンポの良さはないが、晋作の実像に迫ろうとする意欲作。淡々とした文章ながら、晋作の人生がとても奇跡的なものだったということが伝わってきた。著者は、新地会所襲撃(功山寺挙兵)の際、晋作に成算はなく準備不足でお粗末極まりないと厳しく論破しつつも、この成算を度外視した決意が人々の心を動かし起爆剤となり歴史の転機を作ったと高く評価している。この挙兵は、幕末の中ではやや地味な印象を持っていたが、歴史の転機になったという意味でもっと着目すべき出来事だと思う。2023/10/24
叛逆のくりぃむ
9
”動けば風雨の如く、発すれば雷電の如し”(伊藤博文)と評され、幕末を駆け抜けた、高杉晋作の評伝。奇兵隊総督として、武士の世を解体する一翼を担うことになりながらも、毛利家家臣としての意思を根強く持ち続けた二面性を描いている。聖徳太子流の剣客に、試合で敗れたことが柳生新陰流剣士としての自信に大きく傷をつけた逸話は興味深かった。2016/10/04
ちび太
6
YouTuberのミスター武士道さんによる高杉晋作の解説をみて、気になって読んだ。高杉晋作はイケイケの人生だったイメージだが本書を読んでイメージが変わった。藩の重役を勤める家柄で封建主義的な考えを強くもつ一方で、使命感から行動に移していく。失敗が多いし、周りが付いてこないかとも多い。カリスマ的な存在というイメージは死後に作られたものであろう。有名な句も違った意味合いに見えてきた。2021/07/03
BIN
6
高杉晋作の史伝。革命的な人は陽明学好きだなあと常々思っていたら、やはり高杉もそうだった。「おもしろきこともなき世におもしろく」が辞世の句としては正しいらしく、また野村望東尼が下の句として「すみなすものは心なりけり」とつけたらしい。晩年は廃嫡されて谷家になったとか、死後の家族のことなど結構知らないことが多々あって、いい勉強になった。2017/12/21