内容説明
『正法眼蔵』巻頭の「現成公案」巻を皮切りに全87巻の核心を明快に解説。「仏性」巻に道元思想の到達点をさぐる。道元の文章に即しながら、無常や因果など仏教の伝統的テーマを、存在・認識・言語という哲学的視点から鮮やかに読み解く。
目次
序章 道元思想の基底―『正法眼蔵』巻頭、「現成公案」巻をよむ
第1章 真理と言葉
第2章 言葉と空
第3章 自己と世界
第4章 「さとり」と修行
第5章 時・自己・存在
補論 道元の「仏性」思想
著者等紹介
頼住光子[ヨリズミミツコ]
1961年、神奈川県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒。東京大学大学院人文科学研究科倫理学専攻博士課程修了。山口大学人文学部講師・助教授、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科准教授・教授を経て、東京大学大学院人文社会系研究科倫理学専門分野教授。専攻は日本倫理思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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esop
64
みづからをしらんことをもとむるは、いけるもののさだまれる心なり/大乗仏教の根本動機とは、「無知の克服による自己と他者もの救い」/坐禅とは何もしなことであると言ってもよい。俗世の日常の行為はすべて目的ー手段関係に搦め捕られている/認識の相対化/苦を生み出す個我への執着が消える時とはまさに「さとり」の瞬間である/現成公案ー修行の成就であり、修行とは「さとり」と一体のものであるから、それは「さとり」の成就でもある/だからこそ真理を指示する一つの言語表現はつねに相対化され固定化が打破されなければならない2024/09/17
みこ
22
正法眼蔵が難解な書物という認識もなければ、道元についても鎌倉新仏教の6人のうちの一人という程度の認識しか持たず本書に手を出してみたら入門と銘打っている本書ですら想像以上に難解だった。「死後は生前の延長上」「山が動く」「時間に対する認識」この辺から私なりに道元の思想を理解しようとすると「物事の流動性」というものがぼんやりと頭に浮かんだのだがどうだろうか。現代に道元が生きていたら当時はなかったであろう宇宙という概念を基にどんなことを考えていたか少し気になる。2020/07/11
禿童子
16
『正法眼蔵』にチャレンジする前の助走のつもりで軽く読めるかと思ったのは誤算でした。道元の用語法の分析から解き明かすという方法論はある意味大いに助かるのですが、その論理を理解するのも難解ですね。言葉の意味を固定する(文節)と固定しない(無文節)というメスでもって腑分けする行為もまた文節=分別ではないかという疑念が残る。「悉有仏性」を「すべての存在に仏性がある」と読む従来の解釈を「悉有」が「仏性」であると読み換えているというのが一つのキーかな。超現実的な実在を認めない点では、道元はむしろ現代の感覚に近いかも。2017/06/15
カツ
8
前から気になっていた「正法眼蔵」。本編を読むのは無理だろうから入門書を読んでみたが、やはり難しい。言葉で伝えられないものを言葉で伝えようとしているのだから、そりゃそうだ。分からないなりにも道元の思想に少し触れられただけでも満足。2023/06/05
鹿野苑
5
曹洞宗。知り合いの曹洞宗の僧侶はそのまま僧兵になれそうな屈強な感じの方ばかりなんですわ。 『正法眼蔵』はさすがに自分で原典当たらないなあと思っていたので「入門」に飛びつく。 道元さんのことを全然わからないなりに読んだのだけれど、これは良書だと思う。道元さんが主語をひっくり返す読み替え、視点を変えた見方をする様は、パンケーキの裏表をフライパンで美しい動作でひっくり返しているみたいだった。2022/10/03