出版社内容情報
人間の原点を追求し続けた空海の生涯に迫る!
空海の生涯とその思想を丁寧にわかりやすく紹介。24歳で著した『三教指帰』、57歳で著した『秘蔵宝鑰』。空海の思想の出発点と帰着点となったこれらの著書にふれながら、弘法大師信仰とは別の、人間「空海」に迫る。
内容説明
讃岐の豪族の家に生まれた天才児真魚(後の空海)は、一族の期待を背負い大学に入学。しかし貴族に交じり富と名声のために学ぶことに疑問を感じ、自由な思索、自由な学問を求め仏道へと帰依、留学僧となって中国に渡る―。思想の出発点になった『三教指帰』、円熟期の集大成『秘蔵宝鑰』をはじめ多くの著作も紹介。日本の思想・宗教界を導き、後に弘法大師と尊称された空海の生涯と、現代に脈々と息づくその教えに迫る。
目次
第1章 空海の生涯(青年期と入唐;思想の形成期―四十代;円熟期における社会活動)
第2章 著作と思想(著作の全容;『秘蔵宝鑰』について;大乗仏教から密教へ)
第3章 空海と現代(空海の生き方―引きずられない人;空海思想の今日的意義;空海の宗教観―人生と宗教と ほか)
著者等紹介
加藤精一[カトウセイイチ]
1936年生まれ。大正大学大学院博士課程修了。博士(文学)。大正大学名誉教授。東京・南蔵院住職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobi
75
顕教の小乗大乗諸宗から密教の天台華厳真言まで明快な体系化を図ったという空海。彼の著作を紐解くことは即ちそれまでの仏教の歴史と教義を知ることに繋がる。それを分かりやすく解説してくれる。小乗と大乗を水面に映った月影(応身)と月(報身)との関係に例える。さらに仏を仏足らしめる性質としての法身…等。(どこか三位一体に似ている。)「空海の生涯」では804年の4船の遣唐使船の内中国にたどり着いた2船に乗っていたのが空海と最澄といった挿話も。ただ第3章「空海と現代」の彼我の宗教観比較等の見識に疑問を感じる事も多かった。2017/08/15
KAKAPO
28
弘法大師空海の著作を、多くの人々が理解できるようにしたいと、正確な現代語に訳してこられた、加藤精一さんによる『空海入門』。最澄と空海と、並べて語られることの多い弘法大師ですが、大日如来のお導き、としか言いようのない強運を、更に強引とも言える説得力で引き寄せた人だったんだなぁ~と思います。目的を達成するための影響力を得るためには、時勢を読み権力を味方につけることも必要なのですが、少なくとも空海が達成しようとした目的は、世の中の全体最適を目指したものであったということが、現代の為政者と違うところだと思います。2018/11/23
内藤銀ねず
15
内藤家は真言宗なので、祖母も父も仏壇に手を合わせながら「南無大師遍照金剛」と唱えておりました。お大師様こと空海の事跡は知っていても、じゃあ空海の思想とはどんなものなんだろう?と思って読みました。著者は真言宗の学僧で、かなりかみ砕いて書いてますが元は平成十年(1998)の本なのでオウム事件の記憶も生々しい頃に書かれたもの。日本人の宗教感に対する危機感のようなものがひしひしと伝わってきます。空海を世界史レベルでの偉人と捉えて称揚するとこんな感じになるんですね、という感想。2022/04/09
あんさん
11
空海について纏った形で知らないため読む。空海の生涯、著作と思想、空海と現代に分けて記述される。唐への留学期間はもっと長いと思っていたが、わずか2年だった。就いた師の違いもあり、空海は真言宗を、最澄は天台宗をそれぞれ広めることになったが、特段不仲ではなかったとのこと。道教、儒教、他宗の仏教も誤っているのではなく真理へ向かう一段階と見る、寛容な宗教的態度は魅力的。簡潔な入門書なので他の本も読んでもう少し詳しく知りたいと思う。2024/12/15
たびねこ
9
1200年前の人物でこれだけ業績・人格が明らかなことにあらためて驚く。知性があり、創造的で行動派、そつがなく、しかも相当な自由人。出来すぎの感は否めないが、周囲に「引きずられない人」だった、という見立ては、なるほど、とおもう。高校生にもわかるように書いた、というだけあって、オーソドックスで平易な良書。2020/02/02