内容説明
村落を守る馬頭観音像、念仏踊りが変形した盆踊り、もとは先祖霊だった節分の鬼、詣り墓から発生した仏檀―。村落社会の団結と幸福を願う人々の祈りが仏教を受け入れ、迷信や年中行事、芸能等を生み出した。庶民信仰によって変容した日本固有の仏教を追い求め、背後にある日本人の原型を見出す独自な視点。提唱者である五来重が、仏教民俗学の多様な世界についてわかりやすく、その魅力と面白さを語る。
目次
1 現代と民俗
2 年中行事と民俗
3 祖先崇拝と民俗
4 庶民信仰と民俗
5 聖と民俗
6 修験道と民俗
著者等紹介
五来重[ゴライシゲル]
1908年、茨城県生まれ。東京帝国大学文学部印度哲学科を卒業後、京都帝国大学文学部史学科に再入学。高野山大学教授、大谷大学教授を歴任。大谷大学名誉教授。文学博士。専攻は仏教民俗学。93年12月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
47
盆踊りや節分の鬼、仏壇など仏教に影響を受けた庶民信仰が今も残っている。仏教民俗学の提唱者である著者が日本各地を歩いて調査した実例を盛り込んでわかりやすく書かれている。従来の教理的探求や哲学的探求からはうかがい知ることのできない日本人の宗教観が明らかになっているところが興味深かった。また、西行を純粋な求道者ではなく、勧進などを行って日本各地を回る高野聖として見ていく新たに視点が提示されているのもよかった。2021/03/08
世話役
13
柳田國男に教えを受けた著者が、その理論ないし視点をベースに日本仏教や習俗全般を俯瞰した書籍。現在の仏教は上流層のための哲学に成り果てており庶民のニーズを満たしていないこと、著者自身も浄土真宗の家柄ながら、真宗の僧侶から檀家に祈祷や供養を頼まれて困るという相談を受けた際、その僧侶のほうが世の中から期待されている役割を分かっていないと感じた、と指摘していた辺りは痛快であるとともに伝統仏教衰退の理由を端的に示したものとして大いに首是できるものであった。2014/12/31
きくち
6
学生時代購入したものを寝かせまくっていた。日本古来の土着的信仰と仏教の関わり。日々の暮らしに汲々とする名もなき一般庶民における民間信仰、まじないや迷信のようなものから日本の民俗文化、仏教文化を考えるもの。仏典などのいわゆる「正統」でない信仰を邪道として除外するのではなく、むしろより生活に即した切実なよすが、心の拠り所として変容していったものとして考えることで、実用化された宗教観が垣間見える。…ちゃんと学生時代に読んどけば良かったです。2018/09/30
三谷銀屋
3
貴族などの支配階級の宗教ではなく、名もなき庶民に代々受け継がれてきた宗教的風習や精神を、あくまで庶民の目線から読み解いた随筆集。庶民の歴史故に記録に残らず消えていった、あるいは消えていこうとしている風習に込められていた意味を改めて思った。今の時代は「あの世」はどちらかと言えばファンタジー的な観念だけど、遥か昔は生活や人生に密着した思想だったのだろうし、それ故に古来の原始的死生観が仏教と混ざり合って、様々な民間信仰が形作られた。各地を行脚して「庶民の仏教」を支えた遊行聖の話や仏壇の成り立ちなどの話が面白い。2019/08/11
hojichabuster
2
16 冊目。先日読んだ山岳の本から修験道の民俗学に繋がった。五来先生は良い意味で「昔の人」で、旅は人間性を回復するものであり、近代技術を使った(車や電車)旅は自然に回帰することのできはいものとピシャリと言う。本作の後半は特に日本人の死生観、霊山や修験道について、そして庶民性について論じられている。僕は日本人でもないけども、ちょっと足を使った旅をしたくなるそんな本でした。2022/06/13
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