出版社内容情報
与謝野 晶子[ヨサノ アキコ]
著・文・その他
内容説明
与謝野晶子によって初めて現代語訳された『源氏物語』。本書により難解といわれた『源氏物語』が国民の愛読書となった。恋物語としての面白さを濃縮して、恋愛小説として楽しめるのが最大の特徴。桐壷帝の皇子光源氏は幼い頃死別した母に似た藤壷の宮に恋心を抱いていた。山寺を訪れた光源氏は藤壷に生き写しの少女を目撃。僧都から素性を聞き出す―。本巻には「桐壷」から「行幸」を収録。梶田半古の挿画入り。
著者等紹介
与謝野晶子[ヨサノアキコ]
1878年、大阪府堺市生まれ。大恋愛の末に与謝野鉄幹と結婚。文芸美術雑誌『明星』で活躍し、第一歌集『みだれ髪』で一躍、情熱的な歌人として著名となる。その後、小説、随筆、評論、童話、戯曲など多岐にわたり活躍。教育活動にも熱心に取り組んだ。『源氏物語』は、幼少時代からの愛読書で、「新訳」のほか、「講義」(焼失)「全訳」と3度も訳業を手掛けている。1942年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
42
難しい理由は登場人物の多さと、主語が省かれているために物語を見失うからだろう。ウィキペディアに各帖のあらすじが載っている。ペースメーカーにすると良いのではないか。純粋な恋愛は恋愛自体が目的だが、異なる目的が混入することで純粋性は遠のく。だが恋愛が遠のくことを欲していたかのように、かえってドラマは生まれやすい。本作は宮中の話であり、恋愛と政治が重なり合う世界、今の政治家や有名人の人脈が広いというのに近い。朧月夜との仲が有力者に露見し、反感を買って自ら都落ちする。都落ちした明石で明石の君と知り合う。許されて都2025/03/22
優希
39
恋愛ものの面白さを感じました。歌人である与謝野晶子が役しているので物語に独特の雰囲気がありますね。抄訳版なので読みやすかったです。源氏の栄華を中心に描かれていて、華やかさがありました。続きも読みます。2025/04/11
Gotoran
26
情熱的な歌人と云われた与謝野晶子翻訳にて『源氏物語』(54帖)に、遅蒔きながらトライ。云わずと知れた源氏の君(光源氏)を中心にした平安王朝社会でのやんごとなき人々の色恋沙汰。本書(上巻)では、「1帖:桐壷」(源氏の君誕生~12歳)から「29帖:行幸」(源氏の君37歳)まで。登場人物の輻輳に戸惑いつつ、WiKiで系図を調べながら読み進めた。「22帖:玉蔓」からの瑠璃様(玉蔓の幼少名)の成長を見守る源氏の君の[ものにしたいという]したたかさが印象的に残った。次は 中巻(「30帖:藤袴」~「47帖:総角」)を2013/07/21
花乃雪音
23
本邦初源氏物語を現代語訳した与謝野晶子。谷崎訳と本書を併読していると与謝野訳の方が簡潔かつより現代語に訳されていることがわかる。好みでいうと谷崎訳に軍配が上がるが現代語訳の先陣を切った功績の大きさは他の追随を許さない。様々な意味で非難(批判ではなく)されたと思われるこの功績を序文を寄せることで援護した森鴎外の存在も後の現代語訳へ繋がる一助になったように思えた。2021/07/06
kyouikufs
13
上巻は副題通り、「光源氏の栄華」を中心に描いています。源氏の栄華を余すところなく描き出し、中心に源氏を据えながら他の女性を克明に描き出します。しかし、死に関しての描写が淡泊な印象を受けます。気のせいかもしれませんが、その淡泊さは離別の不変さと時間的な反復を中心にも据えているからでしょうか。そうすると、源氏を中心に描いていた作者の目論見は見事に与謝野晶子によって表現されていると言えます。2013/10/30