出版社内容情報
柳田 国男[ヤナギタ クニオ]
著・文・その他
内容説明
かつて女性は神秘の力を持つとされ、祭祀を取り仕切っていた。予言者となった妻、鬼になった妹、生贄にされた美女…女性たちは人々から何を託されていたのか。多くの民間伝承や神話などを検証。シャーマニズムの構造を明らかにし、日本人固有の心理を探る。
目次
妹の力
玉依彦の問題
玉依姫考
雷神信仰の変遷
日を招く話
松王健児の物語
人柱と松浦佐用媛
老女化石譚
念仏水由来
うつぼ舟の話
うつぼ舟の話
小野於通
稗田阿礼
著者等紹介
柳田国男[ヤナギタクニオ]
1875年、兵庫生まれ。1900年、東京帝国大学法科大学卒。農商務省に入り、法制局参事官、貴族院書記官長などを歴任。35年、民間伝承の会(のち日本民俗学会)を創始し、雑誌「民間伝承」を刊行、日本民俗学の独自の立場を確立。51年、文化勲章受章。62年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
46
かつて女性には神秘の力があり、祭祀を取り仕切ってきたという観点からさまざまな事例を取り上げて記述している。巫女や予言者さらには鬼になった女性たちがいたとしているが、事例をいろいろと取り上げるだけで論証するまでに至っていないせいか読むのに難渋した。タイトルの「妹」は古語で夫を意味する「せ」に対して妻や愛人を意味する「いも」の意味のようで、女性にはシャーマンの能力があるとする指摘は当時としては画期的なものだったようだが、現在では批判されることも多いようだ。2024/06/21
ノコギリマン
36
『うつぼ舟の話』がよみたくて、久々の柳田国男。『老女化石譚』と『念仏水由来』をとくに面白く読みました。民俗学、やっぱりたまらんちん。2015/06/04
かふ
20
『遠野物語』よりは論文やエッセイの類で専門的な話もあって難しいのだが、読み込んでいくと興味深い。まあ「妹の力」は『鬼滅の刃』の禰豆子のことだっと思って読んでみる。「妹の力」天皇制の国つ神は元は地方の神であり、それは家の神でもある。そして儒教的なものが支配していても日本の家では奥方の世界があった。男の腕力が及ばない力。それが天皇制の神の元に女を近づけさせない風習となった。巫女は特別なのである。巫女の力は理性的なものよりも感情的な、特に群衆の中に置いていち早く異常事態を感じる力。そうしたものが巫女の預言とか、2020/11/16
roughfractus02
7
シャーマニズムが権力集中する王権を形成する要素をG・デュメジルは統治・祭祀・戦闘の3機能に見たが、著者は男女に権力が配分される社会形態を見た。妹(イモ)は女性一般を指すが、女性の生理を精神作用の変様と捉え、その生得的霊力から祭祀を司る巫女の役割を担い、関係が密接ゆえに禁忌によって統治を行う男性と分離する説話が多い点(兄または妹が鬼になる話)を指摘する。また祭祀を行う女性が献身と純潔を保つために叔母から姪へと継がれる特異な家系を形成したともある。戦時の男性中心の国家神道と重ねて読むと興味深い(1942刊)。2025/02/15
ダージリン
7
シャーマニズムに連なるものなど興味深い内容が多い。また「うつぼ舟の話」の中で、「自分の過去を自分で研究しうる民族の幸福であって、そんな文明国は現在はまだいくつもないのである」という一節が心に残った。アメリカのように建国が遅い国もあれば、文化の断絶がある国もあり、そう言う意味では日本は恵まれているという思いをあらためて抱く。2018/05/01