出版社内容情報
「翁」「井筒」「道成寺」など、代表的な能の名作25曲を通して、能の見方、鑑賞のポイント、舞台の魅力に迫る。世阿弥の時代から現代に届けられるメッセージを読み解く、能がもっと楽しくなる鑑賞入門。
内容説明
文学・音楽・舞台・装束・面・古文書など、能は一生かかっても極め尽くせない分野が総合された巨大な文化装置である。能研究の第一人者が、「翁」「井筒」「道成寺」など、名作25曲の鑑賞のポイントと楽しみ方を解説。作品の背景を知り、想像力を研ぎすまして、舞台上に繰り広げられる静と動、明と暗、喜びと悲しみを感じとる。世阿弥の時代から現代に届けられるメッセージを読み解く、能がますます楽しくなる能楽鑑賞入門。
目次
第1部 歴史―能のあゆみ(俊頼と芸能―中世芸能の源流;中世芸能の始発;唱導劇の時代 ほか)
第2部 作品―能のこころ(能は幽玄である;翁 翁から能へ;重衡または心の修羅劇 ほか)
第3部 鑑賞―能の鼓動(狂と毒と修羅の世界―重衡;式子内親王の妄想―定家;放射する“殺気”―明智討 ほか)
著者等紹介
松岡心平[マツオカシンペイ]
1954年、岡山県生まれ。能楽研究者。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科教授。能の研究上演団体「橋の会」運営委員として、能研究の新しい地平を切り開く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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獺祭魚の食客@鯨鯢
70
能楽は未練を残して亡くなった人物の無念を亡霊(シテ)が観衆の前に立ち現れ、縷々申し述べる視覚文化であると思っています。題目は伊勢物語や源氏物語、平家物語など古典からの説話が多い。 神として神社に祀られる人物の演目はありません。これは未だに浮かばれない弱き者への鎮魂すると共に忘れ去られないためではないかと思います。 「あはれ」「幽玄」など日本人の精神文化は室町時代に能、そして浄瑠璃により伝統芸能として現代に引き継がれています。能を鑑賞できる素養を少しずつ身につけたいと思います。2020/02/28
ムカルナス
8
蒙古襲来の不安な世情の中、一遍や自然居士のような宗教者が踊り念仏や歌や舞を伴う唱導で民衆の心をつかむようになり、それが古来からの田楽や猿楽と融合して能に発展したらしい。そして足利将軍家がパトロンとなると知識階級の趣味にあわせ能は古典文学化する。このような成立過程を経た能はそれ以前の文学や芸能をダムのように貯め込んでおり、西洋の劇に比べると成立は遅いが、文学・音楽・舞台・装束・面・古文書など一生かかっても極めつくせない分野が総合された巨大な文化装置だと言う。能ビギナーとしてはまさに実感するところである。2021/01/25
牧神の午後
7
正直微妙。専門誌や講演のパンフレットでの解説からの再録なんで、読み通すというよりも興味のある演目や部分を拾い読みする方がとっつき易いかも。上掛、下掛などの言葉もなんの解説もなく出てくるから、能楽をある程度は知っている人向けです。2014/12/01
絶間之助
1
第一部では、猿楽、踊り念仏、曲舞、田楽から能の成立、世阿弥による能の大成、そして佐渡配流に至る歴史を理解できる。第二部は、能の背景、詞章から、その演目の意味するところの解説。重衡の亡霊が奈良坂に現れ、罪と罰に立ち返る意義。蝉丸、逆髪とイザナギ・イザナミの四神との関係性。西行桜の名所づくしと花鎮めへのつながり。卒都婆小町、通小町から関寺小町に至る世阿弥の表現。融の北山文化荒廃を象徴する雰囲気。なるほど、古典芸能として残ったものは奥が深いですね。私は知識不足ゆえ、とても役立ちました。2016/06/23