内容説明
真言密教をひろめる空海は、他の仏教思想との違いを明確にするため、こころをキーワードにして、さまざまな仏教思想を比較分類し、真言密教の優位を明確に説明づけた。本書『秘蔵宝鑰』である。秘められた蔵(真の仏の教え)を開く宝のカギの意で、真言密教を指す。空海は、宇宙の中心・大日如来の明るい光の中で、こころを正しく見直せば、毎日が新しい生活になる、と真言密教の効用を平易に説く。仏教史上の名著を訳文で読む。
目次
秘蔵宝鑰 巻の上(異生〓(てい)羊心
愚童持斎心
嬰童無畏心)
秘蔵宝鑰 巻の中(唯蘊無我心;十四問答;抜業因種心)
秘蔵宝鑰 巻の下(他縁大乗心;覚心不生心;一道無為心 ほか)
著者等紹介
加藤純隆[カトウジュンリュウ]
1909年生まれ。元大正大学講師、千葉・金乗院住職。82年没
加藤精一[カトウセイイチ]
1936年生まれ。純隆の子息。慶應義塾大学法学部卒。大正大学大学院博士課程修了。同大学名誉教授。高野山大学客員教授。東京・南蔵院住職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さばずし2487398
24
悟りへの道を10段階にして各仏教を比較。実は皆、本質は同じ事を言ってるのだと。本文は途中から難解になるが、それでも空海の例えはわかりやすい。とりあえず自分は第一住心も抜けてない。苦しみから抜ける世界は遠いものである。2022/01/02
H2A
11
空海晩年の著作で天皇に献上されたと言われるものらしい。書下し文も最初は参照していたが面倒になり、「意訳」の方だけ読んだ。それでも「三教指帰」に比べると難儀する。漢字の用語のオンパレードで文章が読みやすくなっていても相殺すること甚だしい。しかし大変体系的に説かれていて、その教義も幅広い。そして空海言うところの、顕教に対する密教の至上主義。法華経よりも華厳経を上位機に置いているのも興味深い。文章そのものは譬喩も巧みでつまらないとは思わないが、とにかく歯が立たなかった。2018/11/04
Naoko Takemoto
10
あるエッセイで、ネタ消費について語られていたのを読んで気になっていたのだが、結局インスタもSNSも自己主張であり、秘蔵宝鑰の序文では、『人はどこで生まれてどこに死んでいくのかわからない』とあり、そういう儚いものが人というものなら生を受けている間に自己主張があってもいいのではないかと。弘法大師さまはまさかこんなふうに解釈されているとは思いもしなかっただろうし、正直、この考え方が通じるものかわからない。ただ、悩んだ時々に折に触れて頁を開き、歳を経るごとに理解が深まり、導いていただければと思う。2020/08/08
不識庵
10
真言密教の教義を説いているのであるが、そこから何を受け取るにせよ、必ずしも学ぶ目的で読む必要はない。読んでいて空海が私自信に向けて語っているような気になった。弘法大師を身近に感じる体験だった。その割には時間がかかった読書であるが……。2019/07/01
デビっちん
7
24歳のときにあわらした『三教指帰』は、57歳で『秘蔵宝鑰』へと進化した。人間の心は、縁に遇えば流動的に変化し、次第に向上の道をたどっていく。空海は、その向上過程を過去に示された儒教、道教、小乗仏教、大乗仏教、密教などのさまざまな価値を整理し、それに順序をつけて並べ、万人に共通する10種の段階に分類した。空海が序文で述べているが、文章があるからこそ、先人が苦労して切りひらいてくれた知恵を享受できる。そんな恵まれた時代にいるにもかかわらず、自分の目標を見失っていることさえ気がついていない。空海すげー!2015/10/08
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