出版社内容情報
玉上 琢弥[タマガミ タクヤ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
LUNE MER
11
三巻は松風の帖まで。明石の姫君の育ての親になってくれまいか、と紫の上にお願いするところまで。昼ドラでもあり得ないようなドロドロの展開ですよね、客観的に情景を想起しながら現代感覚を当てはめてしまうと。初めて通読した時は「源氏物語を通読すること」が目的と化してしまっていたが、再読以降は純粋に「源氏物語という小説を楽しむ」ことが目当てとなっており、その目的に適うほど現代に通用する小説だという頭になってくる。そのうち子供の古文で源氏物語が出ようものならかなり発奮してしまいそう。2020/05/05
ヤベ
4
源氏は流謫と帰京を経て図太くなったように思う。位階が才能に追いついたのかもしれない。自分勝手な振る舞いが引き起こした揉め事を権勢で丸め込んでしまう貴族的な逞しさを示しだしている。いよいよ非倫理的で艶っぽい世界観が展開されて読んでいてドキドキする。同時に源氏の栄耀にも必ず衰微が伴うことも、他の登場人物の栄枯盛衰が盛んに描かれていることから、より強く思われてくる。あと、明石の入道は個性的で親しみやすい名人物だと思った。2022/01/11
ヤベ
3
186ページの入道の長セリフには感極まった。読む自分が源氏物語の文章のリズムやどの言葉がどの言葉にかかっているかを自然と理解できてくるとともに、文章自体も個性が確立してきたと感じていた3巻だっただけに、長セリフの意味が原文のままで染み通ってきた喜びは、直に覚えた入道へのシンパシーと、それを感じられた自分の文章理解の力の向上の2つの面からなっていて、非常に強かった。一方、性的なことを包み込む源氏の清楚な気配は神がかってきている。いよいよ物語として面白い。2023/01/18
tokijiku
1
「須磨がえり」なんて言葉があるほどこのへんで挫折する人が多いらしい須磨の巻から。都落ちする源氏が女達と延々嘆き合うのは確かにイラッとしますかね。後半は有力ヒロインの明石の君も登場して面白くなってくる。若紫の巻で、紫が登場するより先に明石の伏線を入れてくるあたり紫式部は演出上手だと思う。 3巻目にもなるといちいち巻末訳を確認しなくても下注だけでだいたい読めるようになって来た。巻末の現代語訳は学術的すぎるのでむしろ本文の方が意味は取りやすかったり。2013/11/11
ヒロミ
1
「松風」より「夜一夜、よろづに契り語らひ明かし給ふ」の訳が「(源氏と明石は)一晩中いろいろと将来のお約束をなさってお明かしになる」とあったのですが、この「契り」をどう解釈するか格本の訳で違いますねー。小学館の全集と谷崎訳では「源氏と明石はヤッた(超訳すみません…)」になってるんですが。玉上先生がピュアなのか?でも古語辞典を引くと「契り」は「将来の約束」ともあるしどっちなんだろう…2013/05/27