内容説明
古今に材を求めた秋成の短編集を、わかりやすい現代語訳と読みやすい原文で深く味わう―。平城天皇を乱に巻き込み、挙げ句敗れて自刃した愛人薬子の血は飛び散り、乾かないという怪異を描く『血かたびら』、妹の結婚を相手の父に潰された兄の狂気と愛情に迫る『死首の咲顔』、不幸にも敵と枕を並べてしまった遊女は思いつめ、法然上人の下に向かう『宮木が塚』、大罪を犯した男の、晩年の驚きの末路を描く『樊〓(はんかい)』等ユニークな全10編。
著者等紹介
上田秋成[ウエダアキナリ]
享保19‐文化6年(1734‐1809)。読本作者・国学者・歌人・煎茶家。大坂生まれ。本名は東作。号は無腸など多数
井上泰至[イノウエヤスシ]
1961年京都市生まれ。防衛大学校准教授。専門は日本近世文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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北風
42
テレビドラマ「木乃伊の恋」の原作である円地文子「二世の縁拾遺」の原作の春雨物語。雨月より読みにくいですが、内容は雨月よりバラエティに富んでて好きです。マイベストはやはり「二世の縁」。…「お前らが大事に崇めてる神だの仏だのといったものは、これだけバカバカしいもんだよ!」という秋成の意地悪な声が聞こえてくるかのようです。2016/01/19
ワッピー
37
「怪談を読む・書く」から派生。上田秋成・晩年の小説集。怪異は本筋ではなく、秋成の文学論や観念を提示する装置として使われます。平城天皇の懊悩と反乱を扇動した薬子の自決「血かたびら」、色好みの寵臣・良岑宗貞の出家と栄達「天津処女」、土佐日記に仮託した文学論「海賊」、即身仏の復活と意外な結末「二世の縁」、深夜の文学論「目ひとつの神」、親のエゴと悲劇「死首の咲顔」、想定外の敵討ち「捨石丸」、苦界に堕ちた姫の愛と死「宮木が塚」、刹那に生きる男のピカレスクロマン「樊噲」を収録。「雨月~」におとらぬ名品揃い。おススメ!2021/07/24
オザマチ
11
「目ひとつの神」に登場する怪異の描写が面白く、想像してちょっと笑ってしまった。あれなら僕も会ってみたいくらいだ。しかも、解説によると、あの神は●●を表しているらしい。あんな風に面白可笑しく表現できるのは凄いな。2020/12/05
かみしの
6
春の生暖かさを感じる気候になってきた3月、久しぶりに雨が降ったのでふと思い立って読んでみた。国学者らしい批評精神に富んだ10編の物語。孝のあり方についての秋成の思想が散在しているように思える。時代を下るごとに生まれた原典との齟齬。形式化して目的化した儒教。もっと人間の執念というか情念を大切にするべきでは、という声が聞えてきそうである。そういう点を除いても、「二世の縁」「目ひとつの神」「死首の咲顔」の怪奇、「血かたびら」「天津処女」の歴史小説的記述は、和歌を学んできた人間として純粋に楽しめた。2017/03/21
とまと
2
円地文子「二世の縁 拾遺」より。久しぶりに読んだら大学の授業のことや毎回懸命に授業をしてくれた先生のことを思い出した。授業プリントを見返してみようっと。2012/11/11