出版社内容情報
古代から人の近くに暮らし、様々な伝承に登場する狸。人は狸にどのようなイメージを重ね、そこから何を想像してきたのか。狸を視点に世界を読み解けば人間の思考と歩みが見えてくる。解説/小松和彦
内容説明
狸こそが「絶対的な妖怪」である!?古くから人里の近くに住み、「かちかち山」などの昔話に語られてきた狸。同様に動物変身譚に登場するキツネやヘビが信仰の対象となり神として祀られていく一方で、狸は妖怪としての性格を強めてきた。日本人は狸にどのようなイメージを重ね、何を期待してきたか。生物学者である著者が、徹底した資料収集と構造分析によって、日本人の生活や心の変遷を明らかにする。
目次
第一章 タヌキ昔話の形成(昔話におけるタヌキの役割;ネコのようなタヌキ ほか)
第二章 神仏への愛憎(タヌキの勧進僧;タヌキの客僧 ほか)
第三章 信楽焼定型タヌキのルーツ(藤原銕造のタヌキ;大陰嚢の起源 ほか)
第四章 心理現象としてのタヌキ(山の音;攻撃と憑き ほか)
第五章 狸の意味(中国の狸;日本の狸・たぬき ほか)
著者等紹介
中村禎里[ナカムラテイリ]
1932年、東京生まれ。東京都立大学生物学科卒業。早稲田実業学校教諭を経て立正大学で教鞭をとる。2002年定年退任。立正大学名誉教授。専攻は科学史。2014年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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春風
9
「狸」のその日本における受容と文化史的表象の淵源に迫る意欲作。「狸」は中古・中世においては、イヌ科哺乳類の標準和名タヌキ(N.procyonoides)として我々が知る動物単一ではなく、広範な中型哺乳類を指示していた。その混乱を収拾し、愚鈍で滑稽な文化史的「たぬき」が成立していく過程を著者特有の方法論で論述していく。しかしながら解説でも触れられているように、江戸期の八百八狸等の物語には手が回らなかったようで、その点に不完全燃焼の感がある。しかしながら、大陰嚢を真っ向から論じてくれた事は真に痛快であった。2025/08/03